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「戦争遺跡」で記憶つなぐ 名古屋市の学芸員が本出版 自費で調査続ける

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「戦争遺跡」で記憶つなぐ 名古屋市の学芸員が本出版 自費で調査続ける

 名古屋市の学芸員、伊藤厚史さん(55)が、20年以上にわたり愛知県内の「戦争遺跡」を調査した成果を1冊の本にまとめた。「戦争経験を話せる人が減る中、戦争遺跡がますます重要になってくる」と伊藤さん。記憶をつなごうと、本業である文化財の発掘調査の傍ら、国内外の戦争遺跡を自費で調査し続けている。

 名古屋市熱田区の「西町神社」。花こう岩でできた高さ1メートル程度の旗立てがあり「皇紀二千六百年記念 鍋弦町少年少女日参団」と彫られているのが辛うじて読めた。

 伊藤さんによると「日参団」は日中戦争のころに少年少女らで自然発生的に結成され、神社に毎日参拝して出征兵士の無事を祈ったという。

 伊藤さんは「日参団が寄付したものだろう。こんな小さな神社にも戦争とのつながりを示すものがある」と話した。

 大学で考古学を専攻。昭和59年に市の学芸員に採用された。平成元年、発掘調査で太平洋戦争中の兵舎跡が現れたことがきっかけに、戦争遺跡に関心を持つようになった。

 元兵士への聴き取りで、同じ時期、同じ場所の配属でも記憶が食い違うことがあった。「証言は大事だが、文献や遺構に当たって裏付けていくことも重要だと痛感した」。休日をつぶして実地調査にのめり込んだ。発掘調査員仲間らで構成される調査団に参加し、旧満州の要塞跡を訪れたこともある。

 職場の上司から持ちかけられ、今年3月に軍需工場跡から軍人像まで148カ所を収めた「学芸員と歩く 愛知・名古屋の戦争遺跡」を出版した。調査のためなら山野にも分け入るが、体力が落ちた最近は神社巡りが多い。「身近なところにも戦争遺跡はあるので関心を持ってほしい」と力を込める。