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河川敷16歳死亡から1カ月 「できるなら帰ってきて」 知人ら悲しみ新た 埼玉

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河川敷16歳死亡から1カ月 「できるなら帰ってきて」 知人ら悲しみ新た 埼玉

 東松山市の都幾(とき)川河川敷で吉見町のアルバイト、井上翼さん(16)の遺体が発見されてから23日で1カ月がたつ。逮捕された少年5人は傷害致死の非行内容で家裁送致されたが、一部が所属していた不良グループは別の暴力事件で逮捕者が出るなど、問題の根は解決されていない。月命日に当たる22日には現場に新たに花が供えられ、知人らが改めて早すぎた死を悼んだ。(宮野佳幸、川上響)

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 「できるなら翼に帰ってきてほしいけど、それは無理だから、ずっとつらい」

 冷たい雨の中で遺体発見現場に線香を上げた少女(16)は、手を合わせた後でそう語った。

 少女は井上さんと交際していたといい、「けんかをしても自分が論破してしまったので、もっと翼の話を聞いてあげればよかった」と後悔を口にした。家裁送致された5人については「本人はどう思っているのか分からないが、命を軽く考えているのではないか」と憤りをあらわにした。

 井上さんの幼なじみの少年は「遺族は今もつらそうにしている。雰囲気がだいぶ変わってしまった兄弟もいる」と明かした。事件後、「2日に1回くらい」の頻度で現場に足を運んでいるが、「翼が死んだという実感は全く沸かない」という。遺族とは井上さんの思い出話で盛り上がったといい、「うちに来る途中であいつが自転車でどぶに落ちて、風呂を貸してあげたり…」と力なく笑った。

 別の友人少年は、5人の一部が所属していたカラーギャング「パズル」について「相変わらず活動している。自分たちのことをぶっ飛ばすと言っているらしい」と不安そうに話す。県警は20日、暴力行為処罰法違反の疑いで、メンバー2人を含む17歳の少年4人を逮捕している。

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 ◆再発防止へ更生した「先輩」の力必要

 埼玉県立大の市村彰英教授(非行臨床心理学)はこの事件について、家裁送致された5人の少年が職もなく、学校にもほとんど通わず、帰属集団がない状態だったことを指摘し、「被害者は、不安定な状態にあった少年らのいらつきや攻撃性のはけ口になった」と分析する。

 少年らは「思春期心性」という不安定な発達段階にあり、「取り巻きは『やらないとやられる』という危機感が働き、歯止めもきかず、暴力が目的化した」と事件が重大化した背景を説明。非行少年一般の心情について「他者から大切に扱われなかったこと、周囲が怖がり近づかないことを『見放された』とひずんだ認識を持つ」とし、非行を予防するために、少年らの気持ちを等身大で理解できる、更生した「元不良少年」の先輩が力を発揮すると指摘する。

 そうした元不良少年たちと専門家が各家庭に足を運び、家族も含めた対話を持つことが「手間がかかるが一番効果的だ」と市村教授。「周囲の人が関わるのは非常に努力がいるが、見ているというサインを送り続けることが大切だ」と見守りの目の重要性を強調した。