産経ニュース

都民の消防官 5氏に栄誉

地方 地方

記事詳細

更新


都民の消防官 5氏に栄誉

 昼夜を問わず、都民の生命と安全な生活を守るため、職務に励んでいる東京消防庁の消防官約1万8000人の中から、特に功績のあった消防官に贈られる「第69回都民の消防官」(主催・産経新聞社、後援・フジサンケイグループ)の選考委員会が21日、千代田区大手町の東京消防庁で開かれ、栄えある受章者に5人の消防官が決まった。表彰式は10月24日に大手町サンケイプラザ(東京サンケイビル内)で開かれる。

                   ◇

 □光が丘署消防司令補 冨塚功さん(57)

 ■「命救うには何が」教訓生かす 

 約40年間、数々の大規模火災や災害現場で人命救助に尽力してきた。

 昭和62年6月、東村山市の特別養護老人ホーム「松寿園」で発生した火災に向かった。黒煙をかきわけて2階から女性2人を搬出したが、遅かった。犠牲者は最終的に17人にのぼった。

 より多くの命を救うためには何が必要か-。高齢者は火の手から逃げようと思っても、身体が不自由でスムーズに動けないことが多い。はしごによる救助では対応しきれないと考え、上階から地上まで続く滑り台のような形状の搬送シートの開発につなげた。「今でこそ一般的だが、当時は仲間と知恵を絞って出したアイデア。教訓を確実に生かそうという思いだった」

 52年4月の入庁以来、たずさわった現場は約3500件。「自分の身体は自分で守るのが救助隊員として最低限の仕事。いつでも動ける状態でいなければ」と、休日もジョギングやバドミントンに汗を流す。幼いころから憧れていたという職業をこれからも全うしていく覚悟だ。

                   ◇

 □昭島署消防司令補 佐藤敏彦さん(59)

 ■「患者に優しく」会話が手がかり

 傷病者の症状を探り当て、的確な応急処置を施す。「我慢しないで大丈夫」「どのように痛みますか」。最先端の医療機器もそろっているが、会話がなによりの手がかりになる。丁寧な声掛けを続ければ、表情が和らぐ人も少なくない。「患者に優しく」という当たり前のことを、一番のモットーにしている。

 平成16年5月、35歳の男性が意識障害で心肺停止になり、妊娠中の妻が取り乱していた。妻に状況を聞きながら男性の蘇生(そせい)に当たると、搬送途中に呼吸が回復。わずか1週間で日常生活に復帰した。処置と同時に年齢の近い女性隊員を妻のフォローに徹底させていた。蘇生はもちろん心配りが感謝された。

 スペシャリストとされながらも「日々勉強」。帰りの車内では処置が正しかったのか自問する。それぞれ得意分野を持つ若手2人とチームを組む。「3人がいかに一つになれるか」が重要だという。忌憚(きたん)ない意見を出しあえるよう、後輩とのコミュニケーションも大切にしている。

                   ◇

 □杉並署消防司令補 及川恭子さん(57)

 ■市井の防火対策を厳しく指導

 「災害を拡大させないためには、火災に強い建物を作る手助けをし、維持管理をさせることが必要」。そんな使命感を持ち、建物の管理者や施工業者に防火・安全対策を指導する予防業務一筋に取り組んできた。

 油などの危険物を適切に管理しているか、建築中の建物に十分な防火対策は取られているか-。徹底した指導から管理者側に「招かれざる客」と呼ばれたこともある。どんなに指導しても、当事者が自ら動かなければ十分な対策は取られない。強い信念を持ち、悪い点をはっきり指摘した上で粘り強く交渉し、信頼と安全を勝ち取ってきた。

 平成14年12月、福生市内の塗装業者で開封済みの揮発性の塗料缶が大量に保管されていた際には、未開封の塗料缶まですべて撤去するよう、毎日のように通い協力を取り付けた。

 育児休職などの制度もない時代に、同僚の夫と一緒に2人の娘を育てた。「今後もいまの業務を精いっぱい務めるだけ」。持ち前の責任感で、防火・安全対策に目を光らせる。

                   ◇

 □福生署消防士長 加藤利光さん(59)

 ■より安全に一秒でも早く現場に 

 「一秒でも早く、安全に隊員を現場に届けることが肝心だ」。ポンプ車やはしご車を運転、操縦する「機関員」を32年余り勤めてきた。より早く、より現場に近づくことが求められる機関員。「現着時間が活動の成否を分ける」と強い責任感を持つ。

 そのため、日頃から管内の住宅環境や道路事情を把握し、迅速に現着するための準備を怠らない。休日を使って、管内の消火栓の位置や建物などを確認。運転技術の向上や車の整備点検にも力を入れる。

 後進の育成も熱心に取り組む。職員の大量退職でベテラン機関員が減少した平成24年には、全機関員のデータをパソコンで一元管理し、それぞれの得意分野や運転の癖などを把握できる「機関員カルテ」を作成。若手機関員が効果的に実力を伸ばせる環境を整え、出動中の交通事故の未然防止に貢献した。

 消防人生も残り1年。「より多くの人を救うため、隊員を迅速かつ安全に災害現場に運ぶ裏方として最後まで精進していく」

                   ◇

 □航空隊消防司令補 小西政明さん(56)

 ■後輩には「行動で示す」職人気質 

 救助用ヘリコプターの整備が任務。出動前後の機体に目を光らせ、「普段と違う部分を探している」。ワイヤを触ればねじれに気付く。あってはいけない不具合をつぶすには、経験と集中力が必要だ。

 災害や遭難救助時は、ワイヤで救助隊員を降下させるホイストのため、ヘリに搭乗もする。隊員の着地点は、木に覆われた山肌や濁流にのまれそうな民家の屋根。高度を保ちながら、直径3メートル範囲内でワイヤを上げ下げするという、息の詰まるような作業をこなす。東日本大震災や昨年の北関東豪雨など、活動の範囲は東京にとどまらない。総搭乗時間は2965時間を超えた。

 手に職をつけようと短大で航空機について学び、入庁した。専門知識が問われる航空整備士の仕事に誇りを持っている。飛行前のミーティングでは、操縦士や活動隊員に、整備士にしかできない助言を忘れない。ただ同じ整備士の後輩には、「行動で示したい」。技術屋ならではの職人気質をのぞかせる。

                   ◇

 ■「都民の消防官」協賛団体 三菱地所、東京ガス、サンケイビル、富国生命保険、東京都消防懇話会、東京連合防火協会、東京防災救急協会、三越伊勢丹ホールディングス

 ■選考委員 委員長代行=井出恵士・三菱地所ビル運営事業部長▽委員=花田浩・東京ガス広報部長、中野秀樹・サンケイビル東京ビル営業部長、高橋武・富国生命保険総合営業推進部副部長(部長代理)、佐藤行雄・東京都消防懇話会事務局長、荻原光司・東京連合防火協会専務理事、海藤芳和・東京防災救急協会事務局長、伊藤富博・産経新聞社事業本部長、三笠博志・産経新聞社社会部長