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「人と人をくっつける」 冨永ボンドさん、木工用接着剤で画風確立 佐賀

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「人と人をくっつける」 冨永ボンドさん、木工用接着剤で画風確立 佐賀

木工用接着剤を使って絵を描く芸術家の冨永ボンドさん 木工用接着剤を使って絵を描く芸術家の冨永ボンドさん

 佐賀県多久市の若手芸術家、冨永ボンドさん(33)は、木工用接着剤を使って色彩や立体感を際立たせる画風で、精力的な創作を続けている。「接着剤で絵を描くからには、作品を通じて人と人をくっつけたい」と、地域おこしにも積極的だ。

 「顔や指、細胞に感情。絵のモチーフは、全て人間です」

 赤や青、緑といった色を使い描く。不思議さを醸し出す抽象画だ。これに黒い塗料を混ぜた木工用接着剤で、色と色の境目を縁取る。3ミリほどのふくらみを帯びた線が、絵に立体感や光沢を生み出す。

 福岡市出身。美術が得意科目で、高校卒業後、家具デザイナーを目指して専門学校へ進んだ。念願がかなって福岡県大川市の家具製造会社に就職したが、知人の依頼で始めた広告グラフィックにのめり込んだ。やがて福岡、佐賀両県を中心に、フリーの制作者として活動するようになった。

 さまざまな画像や写真をくっつけ合わせるコラージュが好きだった。そうこうしているうちに、「なぜか、画像の接ぎ目が接着剤でくっついているように見えた」

 26歳のころ、絵筆を手に取って描き始めた。「意外なものを画材にしたい」と考える中、コラージュから着想を得て、木工用接着剤を選んだ。音楽イベントの会場などでパフォーマンスを披露しながら、画風を確立した。

 平成26年夏、多久市に移住した。芸術家としての拠点を構えるため、約330平方メートルの土地に立つ2軒の倉庫を借りてアトリエにした。

 「創作の過程を見てもらいたい」と、ライブでの即興を重視する。商業施設などのイベントに年間50回以上出演し、その場で新作を描く。

 芸術療法の普及に力を注ぐ。精神障害のある児童が集まる病院や老人福祉施設などを慰問し、入所者らと一緒に創作した。

 1年で使う接着剤は、180グラム入り容器で約1千本分という。

 「多久市を芸術の街に」と、地域おこしにも熱心だ。住民グループの活動に加わり、商店の壁やシャッターに絵を描く企画を手掛ける。今年7月にアトリエで開いたイベントには、県内外から約1400人が集まった。接着剤アートがもたらす人と人とのつながりに、手応えをつかんでいる。