歌舞伎俳優・市川海老蔵さん(38)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央さん(33)が、乳がんで闘病生活を送っていることが明らかになる中、乳がん患者や医療関係者が運営するがん患者のコミュニティーサロンが注目を集めている。大阪府泉佐野市の乳がん患者が約10年前に告知された際、自身が情報不足で不安になった経験から、患者に役立つ情報を発信しようと昨年、一般社団法人「らふ」を設立。会員として登録する患者や看護師らに気軽に相談できるのが特徴だ。小林さんと同じ30代の若年性がん患者からの相談も増えており、患者同士の茶話会も開かれている。
泉佐野市内のマンション一室にある「らふ」のサロン。代表理事を務める蓮尾久美さん(53)が自宅を開放し、平成25年にオープンした。がん患者同士が交流する茶話会や看護師による相談会が定期的に開かれているほか、髪が抜けたときに使うウイッグや乳がん患者向けの下着が展示されており、試着もできる。
らふの活動は自身の経験が原点だ。17年、蓮尾さんが42歳のとき、入浴中に自分で乳がんを見つけた。「最近忙しくてがん検診に行ってないなあ」と思いつつ自己検診してみると、左の乳頭の下にごろりとした感触があった。「えっ?」。何度触っても左にだけしこりがある。
病院で乳がんと告知され、手術で左の乳房を摘出。術後の抗がん剤治療を経て、人工乳房による乳房再建手術をした。「乳房は本当に再建できるんだろうか」「髪ってどんなふうに抜けていくんだろう」…。不安でいっぱいだったが、誰に聞けばいいか分からず孤独だった。
患者同士で経験や情報を共有しようと19年、自身が手術を受けた市立泉佐野病院(現りんくう総合医療センター)で患者会を発足。病院ではない地域の身近な場所に相談できる場所をつくりたいとサロンを始め、さらに活動を広げようと昨年5月、同病院の元看護部長らとともに一般社団法人「らふ」を立ち上げた。
らふには患者やその家族、医師や看護師、介護士ら約120人が会員として登録。がん患者の支援制度や緩和ケア、在宅医療の現場などを知る勉強会や交流会を開催しており、多様な見方を通じ地域医療を考えている。病気になっても、介護が必要になっても、最後まで安心して、その人らしく生きるために困らない地域をつくるのが目標だ。
20、30代の若年性がんの相談もあり、サロンでの茶話会もそれぞれの立場で話ができるよう既婚者と独身者に分けて開催。子育て中の患者からは、抗がん剤治療のために通院する際、子供を預けるところに困っているという相談も寄せられているという。
蓮尾さんが最近、痛感しているのが、がん患者以外への情報発信の重要性だ。
「国や自治体のがん対策も進み、幅広く相談できる窓口が全国の病院にできているにもかかわらず、そうした窓口があることすら知らない人が多い。突然の告知で混乱する前に知っておいてもらえたら」と話す。
再発の不安を抱えながらも、サロンで患者らの相談に乗り、講演活動も行うなど精力的に走り回る蓮尾さんは、こう笑顔で話した。
「今の仕事をするために生かされているのかもしれないと思っています」
サロンで開催している茶話会や相談会、ウイッグや下着の試着などの情報は「らふ」のホームページで詳細を紹介している。問い合わせは、らふ(電)072・468・8395。



