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【Newsちば深読み】旭市が文芸賞「海へ」創設

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【Newsちば深読み】
旭市が文芸賞「海へ」創設

 ■「勇気と希望」与える作品募集

 東日本大震災により県内最大の津波被害を受けた旭市で、震災を語り継ぐことを目的とした文芸賞「海へ」が創設された。6月5日に作品募集に向けた発表イベントを開き、9月1日から応募を受け付ける。被災者ら市民有志でつくる実行委員会は「この文芸賞から人々に生きる勇気と希望を与える言葉が生まれることを祈っている」と広く応募を呼びかけている。

 震災語り継ぐ

 文芸賞の審査委員長は、地元出身の詩人、高橋順子さん(71)が務める。高橋さんは、震災で14人が死亡、2人が行方不明者となった同市の飯岡地区(旧飯岡町)で生まれ育った。県立匝瑳高校、東大文学部を卒業後、出版社勤務を経て、昭和52年に第1作の詩集「海まで」を出版。詩歌を中心に小説、エッセーなど幅広い文筆活動を続けている。夫は昨年亡くなった直木賞作家の車谷長吉さん。

 高橋さんの実家は海の近くにあり、震災では浸水被害に遭った。犠牲者の中には同級生もいた。震災直後から故郷への思いをつづった詩をまとめ、平成24年に出版した詩集「海へ」は藤村記念歴程賞と三好達治賞を受賞した。

 高橋さんの詩に励まされた地元の人たちが昨年7月に「囲む会」を立ち上げ、高橋さんの講演会や作品展を市内で開催。震災を語り継ぐため文芸賞の創設計画を持ちかけると、高橋さんは審査委員長を引き受けるとともに、タイトルを「海へ」とすることについても快諾した。

 第1回の募集となる今年度は、「海」をテーマにした自由詩、エッセー、定型詩(短歌や俳句、川柳など)の3ジャンルを募集する。被災体験の有無にかかわらず、海がもらたす災いや恵みを含めた広い捉え方で構わないという。小学生以下から一般まで3部門を設け、グループでの応募も歓迎。作品には挿絵や写真、音楽、ビデオなどを添付することも可能で、総合的な芸術表現として審査する。

 募集にあたり、実行委では作品に独自の3つの条件を定めた。「津波を語り継ぐこと」「原稿は直筆であること」「審査会場で作品を朗読すること」。直筆と朗読にこだわったのは、高橋さんの詩集にある「花は 真っ赤になって 言葉を吐き出そうとしている」のくだりに共感したからだ。

 実行委の渡辺昌子会長(69)は「物言わぬ草木でも言葉にしようと花を咲かせている。言葉を心の奥にしまっておいては、誰からも見えない」と、思いを自ら文字にして、声に出すことの意義を訴える。そして、「優れた作品を集めるための賞ではなく、できるだけ多くの人に参加していただくことが最大の目的」とも話す。

 来月5日イベント

 募集期間は9月1日(防災の日)から11月5日(津波防災の日)とした。これに先立ち、募集要項などを発表するイベントが6月5日午後1時から市飯岡保健福祉センター(同市横根)で開催される。当日は高橋さんが講演し、文芸賞への期待と思いを語る。

 さらに会場では、4月に発生した熊本地震の被災地支援のためチャリティーライブも開く。熊本県荒尾市出身のシンガーソングライター、関島秀樹さんが歌い、募金を呼びかける。

 渡辺さんは「5年前の震災で、たくさんの人に助けていただいたことに感謝している。同じ被災地として、熊本の皆さんに支援の気持ちを届けたい」と話している。問い合わせは事務局(電)0479・57・5769。(城之内和義)