産経ニュース

災害出動、被災自治体と意識差 自衛隊がごみ回収…「国防」空白許されず

地方 地方

記事詳細

更新


災害出動、被災自治体と意識差 自衛隊がごみ回収…「国防」空白許されず

壊れた家財道具などの災害ごみを回収する自衛隊員=4月28日、熊本市南区 壊れた家財道具などの災害ごみを回収する自衛隊員=4月28日、熊本市南区

 熊本地震では、自衛隊がいち早く被災地に出動し、人命救助や、給水・炊き出しなどの支援活動で存在感を示した。地震発生から1カ月以上が経過する中でも、被災地の自衛隊活動に対する要望は大きい。ただ、自衛隊は他国からの防衛という任務を担っており、防衛態勢に穴を開けずに災害出動と兼ね合いをどう取るか、改めて議論する必要がある。(九州総局 村上智博)

                   ◇

 4月16日、熊本県益城町を2度目の震度7の揺れが襲った。町の人口は3万3700人あまり。250人の町職員は、混乱の中で、避難所での受け入れに奔走した。

 陸上自衛隊は2日前の「前震」から益城町にいた。隊員は、家屋の倒壊現場などで人命救助にあたった。同時に、避難所に赤ちゃん用のミルクを届けた。

 「水も食料も民間から入手できるようになれば、いずれ自衛隊はいなくなる。そんな認識を持って、対応すべきです」

 宮崎金次町議(70)は、町災害対策本部で西村博則町長に助言した。宮崎氏は自衛隊OBだ。

 「自衛隊が頼りなんだ。いなくなっては困るなあ」。混乱の中で西村氏はこう答えるのが精いっぱいだったという。

 益城町では今月26日まで、自衛隊員が入浴支援などに取り組んだ。

 熊本市では、大量のごみ処理が問題となった。

 市は災害ごみに限って収集するように決めたが、処理能力が追いつかず、各地で道路をふさぐまでになった。2次災害の危険性もあることから、市は政府に支援を要請。4月28日から、陸自隊員がごみ収集をするようになった。

 熊本市では車中泊を含め、最も多い時で市の人口の14%にあたる10万8千人もの住民が自宅を離れ、避難した。余震も相次ぎ、市民生活が混乱する中で、「災害ごみ」「生活ごみ」の区別は難しかった。自衛隊によるごみ収集は、5月3日まで続いた。

 自衛隊の災害派遣は、都道府県知事らの要請に応じて、実行される。

 その際、「3原則」を満たすかどうかが、派遣の判断基準となる。

 1つ目は「公共性」で、人命や財産を守る必要性がある場合だ。2つ目は「緊急性」で、差し迫った状況である場合をいう。3つ目は「非代替性」で、自衛隊でなければ対応できないことを指す。

 こうした原則があるのは、自衛隊には災害時であろうと、他国からの侵略行為に目を光らせる「国防」の役割があるからだ。国民の生命・財産を守るのが自衛隊の役割であり、防衛に「穴」を開ける訳にいかない。

 実際、東日本大震災(平成23年)の際には、最も多いときで、自衛隊の半数弱の10万人が災害派遣された。適切な規模であったかどうかの議論があった。

 防衛省によると、熊本地震において4月14日の派遣要請以来、被災地への派遣(今月26日まで)は、延べ約74万9200人に達した。

 人命救助や、直後の炊き出しなどは当然としても、ごみ収集作業が「3原則」に合致するかは、検証が必要となる。

 また、地震発生から1カ月が経過し、被災地が徐々に日常を取り戻す中で、自衛隊の撤収時期も問題となる。

 被災地のある自治体防災担当者は「熊本地震で、3原則は必ずしも徹底されていなかった。また、自衛隊が引くタイミングに自治体がどう対応すべきか、事前に防災計画などで検討しておく必要があることが分かった」と語った。