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農業ハウスに発電フィルム 長野県の共同事業体が開発に着手

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農業ハウスに発電フィルム 長野県の共同事業体が開発に着手

 農業用ビニールハウスの代わりにフィルム状の透過型有機薄膜太陽光電池(OPV)を使い、農作物生産と発電の両立ができる発電装置の開発を目指し、県などによる産学官研究コンソーシアム(共同事業体)が産声を上げた。国内初の取り組みで、平成31年の試作品完成を目標とする。県農政部は「まずはブドウの雨よけ栽培で実用性を評価し、農業生産に革新をもたらす新技術として開発していきたい」と意欲を燃やしている。

 近年、県内でも売電目的の太陽光パネルの設置が急速に拡大しており、それが農地を圧迫して農作物栽培に影響が懸念される事例も見られるという。

 こうしたなかで、設立されたコンソーシアムが開発に着手したのは、農業資材としての機能も併せ持った発電装置だ。農業用ハウスのビニールの代わりにフィルム状のOPVを張り、作物の成長に必要な光の波長だけを透過させる。成長に不要な光の波長はOPVが受け止め、その光を発電に用いるという画期的な仕組みだ。

 コンソーシアムは、OPVの農業利用の道を探る諏訪東京理科大システム工学部の渡辺康之准教授と、有機電子デバイス研究開発メーカー「イデアルスター」(仙台市)、県農政部の果樹試験場(須坂市)で構成する。開発や試作、実用性の評価をそれぞれの役割に応じて分担する。

 フィルムに塗る半導体塗料の色や厚さを変えることで透過させる光の波長を選択できる。しかし、作物ごとに成長に求められる光の波長がまだ十分に解明できていないため、どのような特性を持ったOPV開発を行うかが、開発成功への鍵を握る。渡辺准教授は「必要な光を通す装置を開発し、農業を主役に太陽光発電ができるソーラーマッチングを実現したい」と話す。

 OPVの発電量は、パネル式太陽光発電の3分の1程度を目標とする。果樹試験場は「発電した電力をハウスの冷暖房や灌水(かんすい)装置、生育調整のための夜間照明などに利用し、電力供給が難しい中山間地などでの施設栽培により農家所得の向上を図っていく」としている。

 利用を目指す作物の一つであるブドウの栽培では、種なしにする薬液処理や裂果の防止などのメリットが図れるために雨よけ栽培が盛んに行われている。果樹試験場では今年度、試作のOPVを使って雨よけ栽培を行い、収量や品質などへの影響を調べつつ、発電量を検証する計画だ。

 県農政部は「農地に太陽光発電装置を設置する場合には転用許可などの手続きが必要だが、作物に影響を与えないOPVの使用について農林水産省と協議を進めたい」と話している。