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豊島区、23区で唯一の「消滅可能性都市」脱却へ 東京

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豊島区、23区で唯一の「消滅可能性都市」脱却へ 東京

 ■「女性が求める街」に 子育てナビゲーター配置/客引き阻止のパトロール

 あたりが暗くなり、色鮮やかなネオンが輝き始める。大勢の人でにぎわう通りには大音量の歌謡曲が流れ、若い女性が写った風俗店の看板が目に飛び込んでくる。日本有数の歓楽街として知られる、JR池袋駅西口前(豊島区)を象徴する風景のひとつだ。

 商店街関係者によると、このあたりでは数年前まで、風俗店を取り仕切る暴力団らしき男が乗り込んだ黒塗りの車が通りを占拠することもあった。強引な手口で引き込んだ客に法外な料金を要求する「ぼったくり」トラブルも頻発。池袋署管内の刑法犯件数はピーク時の平成15年で6421件と、全102署中ワースト6位だった。

 学習院大などがある同区目白に住む主婦(40)からはこんな声も聞こえてくる。「友人に住所を聞かれたときは、(池袋が思い浮かぶ)豊島区とは言わず、目白と言っている」

 治安が悪く、女性が安心して住める場所からはほど遠い-。そんなイメージが災いしたのか。日本創成会議は26年5月に公表した全国自治体の将来人口推計で、20~30歳代女性が減少するとして、23区で唯一、豊島区を「消滅可能性都市」にあげた。

 これを受けて豊島区は同年8月、広告・放送業界で20~34歳の女性を指す「F1」会議を設置。子育て世代や女子大生ら約30人の委員による議論を踏まえ、区役所内に子育てナビゲーターの配置を実施するなど、27年度予算に関連11事業計約8800万円を計上した。同ナビゲーターは昨年5月に設置され、利用者はすでに延べ5300人と区の予想を上回った。利用者からは「気軽に相談でき、安心して子育てができる」などの評価の声が寄せられている。

 28年度予算案には、新規、拡充事業(全210事業)計約65億円のうち、子育て世代の女性を定住させるための事業などに約43億円(全体の約7割)を計上。▽出産予定者に対して産前産後各1回、計2回の面接で相談に応じる▽認可保育所を新設して待機児童を解消する▽貧困の連鎖を断ち切るため、ひとり親家庭などの子供に対する学習支援-などが主な施策だ。

 国家戦略特区の特例を受けて、JR池袋駅東口前のグリーン大通りでアートフェスを開き、オープンカフェやマルシェを設けた文化芸術都市を目指す方針も表明。街のイメージアップ戦略に取り組む。

 市民レベルのイメージアップ活動も盛んだ。

 地元商店街関係者は平成8年から、客引き阻止や見回りなどのためパトロールを開始した。池袋西口駅前環境浄化推進委員会の加藤竹司委員長(73)は「当初は客引きのチンピラみたいな男に『おれが相手になってやる』と恫喝(どうかつ)された」と振り返る。しかし、悔しさをこらえ、街を変えたい一心で活動を続けた加藤さん。15年には池袋署が活動に協力的な姿勢を表明。署長自らパトロールに参加し、その場で客引き2人を連行したという。

 その後は警察と区の協力のもとで年末年始などのパトロールが行われ、池袋署管内の27年の刑法犯件数は3005件にまで激減した。「女性も子供も安心して歩き続けられる街にするため、これからも活動を続ける」。加藤さんは意気込みを見せる。

 今後、「池袋」が変わったと周囲が実感するためにはどうすべきなのか-。都市計画を専門とする産業能率大情報マネジメント学部の斉藤進教授は「地元住民だけでなく、豊島区外に住み、池袋を訪れる通勤、通学者らと意見交換する場を設け、対外的にイメージアップをPRすべきだ」と話している。(植木裕香子)