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福岡大「ベンチャー起業論」 学生の発想と行動力に企業注目

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福岡大「ベンチャー起業論」 学生の発想と行動力に企業注目

福岡大の学生が考案した商品も並ぶ「野菜王国」の売り場=福岡市中央区の百貨店

 就業体験(インターンシップ)を通じて、学生が企業の経営課題を見つけ、解決策を提案する大学の講義が評判を呼んでいる。九州での草分け、福岡大経済学部(福岡市城南区)の「ベンチャー起業論」には、大手ホテルチェーンや中小企業から提携の申し出もある。企業人にはない学生の発想力と行動力に、企業が“即戦力”として注目する。(奥原慎平)

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 「学生は専門知識や経験はない。だけど、組織に属していない分、客観的な目線で自由に提案ができるのが、経営者に受けているようです。なにより行動力は抜群だと思っています」

 福大の講義「ベンチャー起業論」の学生代表の柴垣寛氏=3年生=は、こう胸を張る。

 同講義は平成10年に始まった。阿比留正弘教授が担当する。毎年約300人の学生が20社に赴き、経営者や従業員、取引先から聞き取りをし、「ビジネスプラン」をまとめる。インターンシップ学生と、その受け入れ企業ではなく、業務提携に似た関係を築く。

 開講から15年ほどが経過し、企業側から申し込むケースが増えているという。

 自然薯の冷凍とろろなどを販売する「野菜王国」(福岡市城南区)は昨年4月ごろ、提携を申し込んだ。

 同社は居酒屋の店主だった崎田正司氏(72)が、70歳の時に設立した。加工商品の販売経験はなく、効果的な売り出しノウハウも分からなかった。崎田氏は、福岡県中小企業家同友会を通じて、同講義の評判を聞いた。

 学生らは市内のさまざまな食品売り場で1千人以上にアンケートした。その結果、自然薯のそのものの認知度が低かったことから、若者向けには自然薯アイスクリームを開発した。

 お年寄り向けには、介護施設20カ所を回り、健康によい食品として営業した。

 成果も出てきた。昨年10月6日を語呂合わせで「とろろの日」として、福岡県内の新聞社やテレビ局にPRすると、週35万円程度だった百貨店での売り上げが、週55万円まで伸びた。

 中小企業だけでなく、有名企業も学生のプランを採用する。

 ロイヤルホールディングスが運営するビジネスホテル「リッチモンドホテル」も、福岡大と“提携”した。学生は数百人の外国人にインタビューを重ね、イスラム教徒が宿泊先で、食事や礼拝の面で困っていることに注目した。

 聖地メッカの方角を示すコンパス「キブラ」や、礼拝用のマットの貸し出しサービス、イスラム教徒向けのハラル食のホテルへの取り入れ-。学生が作った解決策は、経営陣を動かした。今月17日、東京・浅草に開業した海外旅行者向けの「リッチモンドホテルプレミア浅草インターナショナル」で採用された。

 福岡県中小企業家同友会の博多支部・副支部長の古川淳一氏は「考え方や企画の多くは学生レベルに止まっているかもしれないが、ライバル会社に、正面からインタビューを申し込むなど行動力は抜群だ」と語った。この行動力からダイヤの原石のようなアイデアも登場する。

 こうした学生の存在は、「創業特区」に指定された福岡市にとっても、間接的な力となりそうだ。

 また、企業の課題解決を大学カリキュラムに導入する動きは他県にも広がる。

 宮崎大は来年4月、新学部「地域資源創成学部」を設置する。学生が県内の農家や企業で実習し、「6次産業化」として、まちおこしプロジェクトを考える。

 新学部の性格は地元経済界の強い意向で決まったという。宮崎商工会議所の倉掛正志・専務理事は「発想力をもった学生が、中山間地域で勉強する中で、われわれでは見えない課題が見つかることもあるだろう」と期待する。

 山口大が今春開設した国際総合科学部では、企業に加えて、山口県美祢市など自治体の課題解決にも取り組む。

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 福岡大ベンチャー起業論の今年度のビジネスプランコンテストは、19日午後1時から、福岡大8号館で開かれる。