産経ニュース

元特攻隊員の苦悩描く映画「空人」17日公開 さいたま・清宮さんの小説もとに 「平和考えるきっかけに」

地方 地方

記事詳細

更新


元特攻隊員の苦悩描く映画「空人」17日公開 さいたま・清宮さんの小説もとに 「平和考えるきっかけに」

 ■桶川飛行学校で撮影 「当時の空気感じる」

 さいたま市見沼区の作家、清宮零(れい)(本名・勝一)さん(87)の小説をもとにした映画「空人(くうじん)」が、17日からこうのすシネマ(鴻巣市)などで公開される。元特攻隊員の苦悩を描いた作品で、桶川市川田谷の旧熊谷陸軍飛行学校桶川分教場(桶川飛行学校)などで撮影を敢行。清宮さんは「お国のために戦った特攻隊員の姿を見て、戦争や平和について考えるきっかけにしてほしい」と話している。(川峯千尋)

                   ◇

 「空人」は特攻隊に志願した主人公の勝雄が、写真でしか知らない上官の妹に恋慕の念を抱いたことから少しずつ運命が狂っていくというストーリー。高熱を出した勝雄は出撃を免れるが、その代わり勝雄をかわいがってくれた上官が「妹をよろしく頼む」と言い残し出撃。後悔を抱きながら終戦を迎えた勝雄が、70年後に上官の妹の娘、紀和と出会ったことで、揺れる心情が細かく描かれている。

 清宮さんは昭和19年、旧海軍甲種飛行予科練習生に志願。特攻隊員となり、20年8月18日にサイパン島でB29を撃破する任務についていたが、直前に終戦を迎えた。17歳の時だった。「これから君たちは平和の特攻隊員となって、新しい日本を築いてくれ」。武装解除の際、上官からもらった別れの言葉が執筆のきっかけとなった。

 主人公の勝雄は、特攻隊員として出撃することに疑問を抱くが、「お前らの命は鴻毛より軽い。そう言われてきましたし、無我夢中だったから疑問を抱く暇もなかった」と清宮さんは当時を振り返る。実戦経験こそないが、映画には清宮さんの訓練の体験が随所に表れている。

 撮影にあたり、制作スタッフは訓練場の宿舎としてふさわしいロケ地を日本各地で探していた。たどり着いたのが、実際に特攻隊の訓練所として使われた兵舎が今も残る桶川飛行学校だった。映画制作会社のプロデューサー、徳永裕明さん(53)は「映画設定が海軍だったので相違が出てくるが、当時の空気感が伝わってきた」という。

 同校を管理する旧陸軍桶川飛行学校を語り継ぐ会の協力を得て、セットを組んだ同校の車庫や兵舎、ホンダエアポートの滑走路など県内で4日間、撮影を実施。若き日の勝雄の葛藤を厳かな雰囲気が引き立たせている。

 清宮さんは「ここで少年たちが訓練に励んでいたと思うと、よく頑張ったなという気持ち。今年は戦争について考える機会も多いと思うが、戦争で人生の歯車を狂わされた彼らの人生を見て何か感じてもらえたら」と力を込めた。