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【戦後70年 東北の記憶】男鹿脇本事件(下)守れていなかった海岸線

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【戦後70年 東北の記憶】
男鹿脇本事件(下)守れていなかった海岸線

男鹿脇本事件の翌日、日本海を高速で逃走する北朝鮮工作船。逃げた2人の工作員が乗っているとみられる(海上保安庁提供)

 秋田県男鹿市脇本の海岸で北朝鮮から密入国した工作員が逮捕された翌日、昭和56年8月6日昼ごろのことだった。男鹿から400キロ余り沖の日本海のど真ん中で、海上保安庁が不審な船を確認した。

 海保は平成14年になって「巡視船艇・航空機により追跡するも逃走」とだけ発表したが、公安関係者は次のような状況を明かした。

 ◆振り切られた巡視船

 巡視船のレーダーが北朝鮮に向かう不審な船影をとらえて追跡し、約7キロまで接近。肉眼でも船体を確認したが、船は約30ノット(約55キロ)の高速で振り切った。漁船を装っていたが、明らかに違った。海保は航空機でも追ったが、日本の漁業専管水域を出たため断念した。ゴムボートで逃げた2人の工作員を乗せたとみられる工作船だった。

 「遠浅の浜辺で、夜は真っ暗。潜入・脱出には絶好の場所ですよ」。男鹿脇本事件の当時を知る地元漁業者の高桑芳英さん(82)と加藤邦夫さん(80)は口をそろえた。

 秋田県はそれまでも北朝鮮工作員の出入りポイントになっていた。公表されているだけでも次のような事件がある。

 昭和38年に能代市の海岸で拳銃や乱数表などを持った工作員計3人の水死体が見つかった「第一次、第二次能代事件」▽同年に八森町(現・八峰町)の海岸から密入国した工作員が翌年、愛知県警に逮捕された「一宮事件」▽43年に男鹿市の海岸から密出国しようとして失敗した工作員が警視庁に自首した「男鹿事件」▽44年に能代市の山中から無線機や乱数表、400ドルの米国紙幣が見つかった「岩崎・能代事件」▽47年に象潟町(現・にかほ市)の海岸から密出国し、49年に兵庫県の海岸から密入国した後、再び密出国しようとした工作員を同県警が逮捕した「切浜事件」…。

 韓国当局が摘発した北朝鮮工作員の中にも、秋田県からの出入りが認定された者がいる。