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火種振りまくメガソーラー 由布市住民と業者対立深刻化 大分

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火種振りまくメガソーラー 由布市住民と業者対立深刻化 大分

メガソーラー建設計画が進む旧市有地。背景に由布岳の稜線が見える=大分県由布市湯布院町

 大分県由布市の景勝地、塚原高原のメガソーラー(大規模太陽光発電所)計画をめぐり、建設を進めたい事業者側と、景観破壊による観光業への打撃を心配する住民側の対立が続き、抜き差しならない状況に陥っている。「脱原発」の旗手として持ち上げられたメガソーラーは、電力不足解消に寄与しないどころか、各地で対立の火種を振りまいている。 (九州総局 津田大資)

 「丘陵地でパネルを隠しようがない。計画通り建設されると、辺り一面、パネルだらけになり、観光資源の損失は計り知れない。開発事業者に理解してもらえるまで訴え続ける」

 地元の観光事業者らでつくる湯布院塚原高原観光協会の渡辺理会長はこう語った。

 由布岳の北麓、塚原高原は美しい風景と温泉を求め、年間を通じて国内外から観光客が訪れる。周辺には旅館やペンション、レストラン、別荘などが点在する。

 その高原で今、大分道を挟んで2つのメガソーラー建設計画が進む。

 大分道南側の市有地約20万平方メートルと、北側にある民有地約30万平方メートルだ。計画通り進めばヤフオクドーム7個分の土地に、計十数万枚のソーラーパネルが敷き詰められる。

 高台から眺めればパネルがむき出しとなる。景観という観光資源が台無しとなり、観光業にとって死活問題といえる。

 2カ所のメガソーラー計画のうち、市有地は、地元農家らが「入会地(いりあいち)」として共同利用してきた。だが、権利者の高齢化などで維持が困難となり、15年ほど前から由布市が売却先を探していた。

 なかなか買い手は現れなかったが、民主党政権が平成24年7月に導入した再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)が転機となった。

 東京の投資会社がメガソーラー用地として購入に名乗りを上げ、25年3月に仮契約を結んだ。

 当時、FITによる太陽光発電の買い取り価格は1キロワット時あたり40円(税抜き)という高値だった。全国各地でメガソーラー計画がわき上がった。

 長年買い手がつかなかった土地だけに、由布市議会も売却案をすんなり可決したが、その後用途を知った観光事業者や地元住民らが猛反発する。あわてた市は明け渡しを保留し、投資会社に所有権移転の契約解除を求めた。

 これに対し、投資会社側は契約履行を求めて市を提訴。25年7月、市側が投資会社の主張を受け入れ、投資会社が実質勝訴する形で、訴訟は終結した。市は「契約通り所有権を移転した上で、計画見直しを協議したい」としている。

 ●住民側も提訴

 地元住民も行動を起こした。入会権を持っていた住民の1人が昨年11月、市と投資会社の売買契約の無効確認を求めて提訴した。その他、地元住民約30人が、建設差し止めを求める訴えを大分地裁に起こした。

 投資会社はこれまでに4回にわたって地元説明会を開催しているが、平行線のままという。投資会社の広報担当者は「景観に配慮し、地域住民とも協議をしながら、計画を進めたい」とコメントした。

 同社は当初、6月に着工する計画だったが、先延ばししている。

 もう一つのメガソーラー候補地である民有地は、「リック・スプリングバレー」と呼ばれる別荘用地だった。バブル期に開発され、一部に別荘も建ったが、バブル崩壊で計画は頓挫。転売の憂き目にあった。

 この土地を25年10月、福岡市に本社を置く太陽光発電会社がメガソーラー用地として購入した。この企業は、中国の太陽光パネルメーカーと、国内企業が合弁で作った会社だ。

 合弁会社は今年5月末に初めて周辺の別荘所有者らに計画概要を説明。反対意見が相次いだが、「住民らに理解を得られるよう努力する」と、あくまでメガソーラー開発を進める意向を示したという。

 ●条例効果は薄く

 着地点の見えない状況に、行政側も頭を抱える。

 由布市は昨年1月、地元住民らの要請を受けて、メガソーラー建設にあたって市への事前届け出などを盛り込んだ新条例を制定した。とはいえ、罰則規定や強制力はなく、計画の事前把握や協議にとどまっている。

 開発をめぐって森林法に基づく許可を出す大分県も、事態を深刻に受け止める。県の外郭団体である公益財団法人「森林(もり)ネットおおいた」が旧市有地を投資会社から買い取り、メガソーラーの適地を別に斡旋(あっせん)することを提案したが、受け入れられず立ち消えになったという。

 由布市の都市・景観推進課の担当者は「民有地の業者には条例に基づく協議を求めているが、いまだ正式な話し合いはできていない。旧市有地についても粘り強く理解を求めるしかない」と述べ、対応の難しさを滲(にじ)ませた。

 由布市のような騒動は、全国的に散発している。

 蒜山(ひるぜん)高原がある岡山県真庭市でも昨夏、別荘用地の一部にメガソーラー計画が浮上した。真庭市は景観破壊を危惧し、対象地を市が先んじて買い上げ、計画を食い止めた。

 真庭市は由布市の条例を参考に、今年1月に同様の条例を制定した。こうした条例は山梨県や静岡県富士宮市なども制定している。

 地域に対立を持ち込んだメガソーラーは、原発再稼働が進まない日本の電力供給にどれだけ貢献したのだろうか。経済産業省資源エネルギー庁によると、平成26年度の太陽光の発電量は8894万キロワット時。国内総発電量7904億7763万キロワット時の0・01%に過ぎなかった。