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声失っても「自分の声でしゃべれた」 喉頭がん患者らに朗報 音声合成ソフトに注目

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声失っても「自分の声でしゃべれた」 喉頭がん患者らに朗報 音声合成ソフトに注目

ボイスターの音声収録の様子。半日程度の作業で「自分の声」を再現できる

 歌手で音楽プロデューサー、つんく♂さん(46)の声帯摘出手術の告白は、ファンに衝撃を与えた。そんな中、手術前に録音した自身の声のデータを使って音声を合成するコンピューターソフトが注目を集める。製作・販売するヒューマンテクノシステム(福岡市博多区)は「国内で年間約1万人が、つんく♂さんのように声を失っている。世界に一つしかない自分自身の声で会話することは、手術後の生き甲斐につながる」としている。

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 パソコンのキーボードに文章を打ち込むと、まるで本人がしゃべっているように流暢な声がスピーカーから流れる。使用方法も簡単なのが、音声合成ソフト「ボイスター」の特徴だ。

 音声合成ソフトは世界中に数多くある。だが、大半は、機械的な音や、まったく別人の声を使う。これに対しボイスターは、本人だけでなく、家族や知人からも「違和感がなく会話ができる」と好評だという。声帯を摘出した大学教授は、ボイスターを使って、90分の講義を毎週2回続けている。

 ボイスターは声を失う前に、利用者本人の声を録音し、データベース化する必要がある。

 まず、利用者の日常会話や、仕事の内容などを聞き取りし、どういう内容の言葉をしゃべる機会が多いかを調べる。その上で、定型文に加え、特徴的な言い回しなど加えた文章を、朗読して録音する。録音作業は半日程度で終了するため、摘出手術を急ぐ人でも可能だ。

 その後、1カ月ほどかけて録音内容を分析・加工し、データベースを作成する。これで、録音した以外の文章も、パソコンを通じて、自由に話すことができる。価格は36万~95万円。

 ボイスターは、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)の音声合成技術を活用し、沖電気工業が開発した。平成20年に販売を始めたが、需要が少なく、同社は撤退を検討するようになった。

 このソフトに、ヒューマンテクノシステムが着目した。ヒューマンテクノシステムの主要取引先の一つが沖電気だった。

 ヒューマンテクノシステムは今年1月、ボイスターの製作や販売の権利を譲り受けた。

 喉頭がん治療による声帯切除や、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで声を失う人は年間1万人程度いるとされる。同社はこうした人々への普及を目指している。

 ボイスターの利用は、声を失った人だけではない。声優の声で、館内放送やメールや電子書籍の読み上げをすることもできる。

 同社は現在、スマートフォンやタブレット端末向け「ボイスター」の開発も進めている。こちらは年内にも実用化するという。

 ヒューマンテクノシステムの増住泰成社長は「人の声ほど個性的で本人性を表すものはない。ボイスターは声を失い、悩み苦しむ人たちの支えになる」と語った。

 問い合わせはヒューマンテクノシステム(電)092・271・5810。