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【ロケ地巡りの旅】映画「天心」 竹中直人、中村獅童演じる美術界の師弟が新天地とした「五浦六角堂」(北茨城市)

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【ロケ地巡りの旅】
映画「天心」 竹中直人、中村獅童演じる美術界の師弟が新天地とした「五浦六角堂」(北茨城市)

被災後に再建された「五浦六角堂」=北茨城市大津町五浦

 濃紺がうっすらとグレーに変わる境界線のあたりから、何千、何万回と押し寄せては、冷たい岩に粉々に打ち砕かれる巨大な水のうねり。「日本の音風景100選」にも選ばれたその波音を聞きながら、先人は何を感じていたのだろうか-。

 茨城の北端、北茨城市五浦海岸にある茨城大五浦美術文化研究所の「六角堂」。海にせり出した岬の上に建てられ、そこだけぽっかりと浮かんだような六角形の空間は、日本の近代美術の発展に貢献した岡倉天心が設計、明治38(1905)年に建てられた。国の登録有形文化財に指定されていたが、東日本大震災による津波で土台を残して流失。現在の建物は所有する茨城大が寄付金を募り、建築当時の姿を細部まで再現する形で震災から約1年後に再建された。

 天心の生誕150年、没後100年記念として構想されていた映画「天心」(松村克弥監督)の制作も震災で一時危ぶまれたが、北茨城市の豊田稔市長と地元住民が「映画を復興のシンボルに」と映画の実行委員会を牽引。六角堂再建後の24年11~12月、周辺の旧岡倉天心邸、太平洋を一望できる「日本美術院」のロケセットなどで撮影が行われ、これまでに県内外の各地で上映されている。

 約3週間にわたり出演者やスタッフらが宿泊したという五浦観光ホテルの村田文彦専務は「厳しい寒さの中、深夜まで撮影が続くこともあり、疲労回復効果のある温泉がとても喜ばれました」と振り返る。

 震災後の風評被害で落ち込んだ五浦地区の客足は、震災前の6、7割程度までしか回復していないという。村田専務は「五浦は天心の“再出発”の場所。映画をきっかけに、ここから始まる復興を全国に発信したいですね」と話す。

 天心が絶望のふちから、日本の未来を見つめた場所。時代を超えてそこに重なる人々の思いに、静かな感激を覚えた。(水戸支局 緒方優子)

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