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【昭和天皇の87年】戦艦2隻が相次ぎ沈没 連合艦隊は底なしの悪夢に取りつかれた

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【昭和天皇の87年】
戦艦2隻が相次ぎ沈没 連合艦隊は底なしの悪夢に取りつかれた

画=井田智康 画=井田智康

 戦前の海軍内部に精通し、大海軍記者と呼ばれた伊藤正徳(※3)が、当時の東郷をこう書く。

 「少しも取り乱さず、というような叙述では、とうていその姿を描くことはできない。あたかも、悲しみの作用をつかさどる神経を手術摘出してしまった人間のように、悲しみを示さなかった。(中略)日本海軍はよい司令官を持ったものである」

 将器は、逆境においてこそ発揮される。このとき東郷が動揺の色をみせれば、それは連合艦隊の全艦船に伝染し、全将兵を萎縮させただろう。その結果、新たな失策を生み出しかねなかった。

× × ×

 ピンチのあとにチャンスありという。

 主力艦の喪失は、図らずも膠着(こうちゃく)した戦局を変えた。ロシアの旅順艦隊が6月23日、日本側の戦力低下に乗じて出港してきたのだ。もっとも司令長官のヴィトゲフトは、連合艦隊の闘志に微塵も揺らぎのないのをみて、一戦も交えず旅順港に逃げ戻った。この弱腰に極東ロシア軍の総指揮官アレクセーエフは憤慨し、皇帝ニコライ2世の勅命を取り付けて再度の出港を厳命する。

 8月10日、今度こそ旅順艦隊は、不退転の決意で旅順港を出港した。

 待ち構える連合艦隊にとって、このチャンスを逃すわけにはいかない。東郷の運が本物かどうか、いよいよ試されるときが来たのだ--。(社会部編集委員 川瀬弘至 毎週土曜、日曜掲載)

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