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【iRONNA発】オウム死刑執行 「第二の麻原彰晃」はもう生まれない 島田裕巳氏

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【iRONNA発】
オウム死刑執行 「第二の麻原彰晃」はもう生まれない 島田裕巳氏

麻原彰晃元死刑囚らの死刑執行のニュースが映し出された街頭モニター=6日午後、東京・秋葉原(三尾郁恵撮影) 麻原彰晃元死刑囚らの死刑執行のニュースが映し出された街頭モニター=6日午後、東京・秋葉原(三尾郁恵撮影)

 信者から多額の献金が集まったのは、カネ余りの時代風潮があったからだ。また、信者がオウム真理教に興味を持ち、入信していったのも、そうした時代風潮にむなしさを感じ、修行による解脱を目指したからだった。逆に、今はそうした時代ではない。アレフやひかりの輪という形でオウムの教団が残存していても、それがさほど拡大していかないのは、当時とは時代が違うからだ。

 さらに、現在との時代の違いは、「終末観」があげられる。オウムの信者らは、1970年代にまだ子供で「オウム世代」と呼ばれたが、彼らは99年に世の中が終わるとする「ノストラダムスの予言」を信じた世代だ。その時代には、小松左京の小説『日本沈没』がベストセラーになり、超能力者を称するユリ・ゲラーという人物がブームを巻き起こした。

 そのとき、大人になっていた人たちは、そうした事柄を真に受けなかったが、子供たちは違った。99年までしか人生は続かないと信じていた人たちは、実際かなり存在した。ただ、この年に世界が終わるという予言は、実際にその年が訪れ、世界が終わらなかったことで効力を失った。そのため、今では、これらを信じていた人たちがいたことについて想像力が及ばなくなっているが、それがオウムの事件の背景にあったことは間違いない。

 激変した平成年間

 そして平成の終わりに、オウムの事件は最終的な決着を迎えようとしているが、そもそもオウムの存在が一般に知られるようになったのは、平成の最初の年だった。31年続くはずの平成の時代は、その始まりと終わりでは、状況が大きく変化した。その間に、オウムの事件もそうだが、米中枢同時テロや、東日本大震災による福島第1原発の事故など、世の終わりを思わせるような事件がいくつも起こった。

 逆に、そうした想像もできなかった事件が起こったことで、世の終わりに対する想像力が働きにくくなったという面はある。バブルも過去のことになった今、オウムが起こしたものと同種の事件が、それほど遠くない将来に起こることは考えられないのではないだろうか。

                  

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【プロフィル】島田裕巳(しまだ・ひろみ)

 宗教学者、作家。昭和28年、東京都生まれ。東大大学院人文科学研究科博士課程修了(宗教学専攻)。日本女子大教授などを経て、文筆業。著書に『葬式は、要らない』(幻冬舎)など多数。近著に『AIを信じるか、神を信じるか』(祥伝社)。

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