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【赤字のお仕事】「カザン」と「カザニ」 揺れる表記の訳とは

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【赤字のお仕事】
「カザン」と「カザニ」 揺れる表記の訳とは

 先月、校閲部にある通達(用語関係)が回ってきました。通達の内容を簡単に書いてしまうと、「ロシアの都市名カザニはカザンとする」ということでした。

 平昌五輪は間もなく閉会しますが、今年はもう一つのスポーツのビッグイベントであるサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会が控えています。サッカー男子日本代表のキャンプ地および開催会場の一つである「カザン」に関しての表記統一の通達です。

 カザンはロシアにあるタタルスタン共和国の首都で、人口も100万を超え、ロシア全体の中でも大きな都市です。広辞苑、大辞林、大辞泉などの辞書は「カザン」の表記ですが、新聞ではほとんどが「カザニ」の表記です。

 なぜ新聞の表記が「カザニ」なのかというと、日本新聞協会新聞用語懇談会がまとめた「外国地名の書き方」に合わせた表記なのです。このなかのロシア語の項に「軟音符号『’』は『イ』のように扱って書く」とあります。例として「Arkhangel’sk=アルハンゲリスク、Kazan’=カザニ」が載っています。

 この軟音記号を新聞表記では一律に「イ」としているのですが、辞書ではこれを「『イ』または無音」として使い分けているようです。平凡社の『世界大百科事典』では、「外国語のかな表記について」で「軟音記号。[イ]または無音」とあり、「Gogol’=ゴーゴリ、Kazan’=カザン」が例としてありました。

 このように大方の新聞表記では「カザニ」なのですが、実は産経では平成17年から「カザン」の表記にしています。カザンにしているのに、また「カザンにする」通達とは変ですが、この通達、今回で3回目の通達なのです。

 1回目が17年8月に出され、2回目は25年7月に出ました。そして先月、3回目の通達となりました。

 1回目に出された経緯はよく分からないのですが、データベースで当時の記事を見ると、ロシアに関する企画の中でカザンの名が出てきました。現地音に合わせたいということで直したようですが、日本語での表記は今でもはっきり決められるものではありません。編集作業上、煩雑になることもないのでカザンにしたようで、産経ハンドブックのなかでも例外扱いになりました。

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