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【赤字のお仕事】「新規まき直し」の「まき」、漢字で「巻き」と書いてはいけません

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【赤字のお仕事】
「新規まき直し」の「まき」、漢字で「巻き」と書いてはいけません

 ある評論を校閲していたときのことです。その文章の中に「新規まき直し」という表現が出てきました。

 私は特に気にならなかったのですが、その評論の出稿担当者が、「『まき直し』の『まき』は漢字にした方がいいですか」と尋ねてきました。なるほど、確かに「直し」は漢字なのに「まき」が平仮名ではバランスが悪いように見えます。

 そこで私は何のためらいもなく、「まき」を「巻き」に漢字変換して「新規巻き直し」と修正し、その他の赤字直しも終えて一息ついていました。ところがしばらくすると、本当にそれでよいのだろうかという疑問が湧いてきたのです。

 私は不安になり、産経新聞の用字用語の手引『産経ハンドブック』を見てみました。すると、顔からみるみる血の気が引いていく気がしました。

 何とそこには「しんきまきなおし」の項目があり、漢字表記は「新規まき直し」で、注記として「『まく』は『蒔く』。表外字なので仮名書き」にすること、さらに「新規巻き直し」は「誤用と認められる表記、語句」とされているではありませんか。

 私は慌てて出稿担当者に連絡し、「新規巻き直し」が誤りであることを伝えて再び「新規まき直し」に戻し、赤字が紙面化する大失態を免れることができました。

 このように、正しい原稿に手を入れることによって間違ったものにしてしまう赤字のことを「逆赤字」と呼びます。校閲とは本来、原稿の誤りを修正することなのに、逆に間違いを作ってしまうのですから、これほど恥ずかしいことはありません。

 ここで「まきなおし」を辞書で改めて調べてみましょう。『デジタル大辞泉』(小学館)は漢字で「蒔き直し」と書き、1番目に「種をもう一度まくこと」、2番目に「物事を初めからやり直すこと」と説明し、用例として「新規蒔き直し」を挙げています。『大辞林』(三省堂)、『広辞苑』(岩波書店)の説明も同様でした。

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