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【正論2月号】朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

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【正論2月号】
朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

北朝鮮ミサイル問題と日露関係

 一方、日本や韓国が北朝鮮に対する懸念を募らせるほど、東アジアにおける米国の軍事プレゼンスは重要性を帯び、ミサイル防衛(MD)協力も進展していく。これはロシアにとっても好ましいことではないが、切迫性から言えば中国ほどのものではないだろう。ロシアは中国のように、西太平洋から米国のプレゼンスを排除しようとまではしていないし、もとよりそのような能力も存在していないためである。 

 冷戦後の歴史を振り返っても、ロシアはNATOの存在そのものに対して否定的な態度を示してきたが、日米同盟や米韓同盟に対しては警戒的容認、という程度であった。アジア太平洋におけるMDについても、従来は北朝鮮の脅威を理由として(!)容認姿勢を示していた。ソ連軍出身の国際政治学者ドミトリー・トレーニンが述べるように、大西洋の米露関係と太平洋の米露関係は全く異なったものであったと言える。  だが、この数年、ロシアの態度には変化が見られる。もっとも顕著なのは、2015年に改訂された「国家安全保障戦略」において、アジア太平洋地域におけるMDシステムの配備が欧州と並んで「戦略的安定性の毀損要因」に挙げられたことであろう。2017年6月には、プーチン大統領が「北方領土の軍事力強化は韓国へのTHAAD配備など東アジアの米軍増強に対抗するため」という、どうにも理屈の通らないことを言い出し、在京ロシア大使館もわざわざ同じような内容の武官ブリーフィングを開催した。さらに日本がイージス・アショアの導入を決定すると、これについても「戦略的安定性を損なう」としてロシア外務省が反対の声明を(しかも11月の河野外相訪露に合わせて)発出している。  

 韓国防衛用の戦域MDシステムに過ぎないTHAADへの言いがかりは別として、日米のイージス弾道ミサイル防衛の発展がロシアの核抑止力に影響するのではないか、との懸念は純軍事的には理解できないものではない。ロシアはバイカル湖よりも東にはICBM師団を配備していないが、オホーツク海には海軍の弾道ミサイル原潜が遊弋しており、ICBMが全滅した場合の核報復能力を担っている。日米が高度の弾道ミサイル防衛能力を備えるようになれば、この報復核攻撃能力をある程度制約できる可能性はたしかにある。  

 だが、こうした純軍事的な懸念をそのまま鵜呑みにすることもできない。日本側としては、「したがって北方領土の戦略的価値は極めて高いのであり、容易には返還できない」というロジックをロシア側が持ち出してくる可能性もまた考えておくべきであろう。昨年以降、ロシアが北方領土を巡る安全保障上の懸念に盛んに言及し始めたのは、まさにこうした背景によるものとも考えられる。  

 朝鮮半島危機が回り回って北方領土問題にも波及してきた形だが領土問題は長期的な外交課題であり、北朝鮮のミサイル開発は我が国の安全保障に対する実存的脅威である。安倍政権の進める対露関係の強化はそれとして重要であるとしても、そのためにロシアの主張に振り回され、北朝鮮への備えを怠ることはないよう望みたい。

 小泉悠(こいずみ・ゆう)氏 1982年、千葉県出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員などを経て現職。著書に『軍事大国ロシ

※この記事は、月刊「正論2月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

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