産経ニュース

【正論2月号】朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

ニュース プレミアム

記事詳細

更新

【正論2月号】
朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の第2回試射=2017年7月(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「パートナー」としての露朝関係

 もちろん、ロシアは北朝鮮に関して全く無関心であったわけではない。2000年には、1996年に失効したソ朝友好協力相互援助条約に代わる露朝友好善隣条約が締結され、プーチン大統領が就任早々、ロシアの指導者として初めて訪朝するなど、ロシアと北朝鮮の関係には揺り戻しが起きたかのようにも見えた。ただ、それでも露朝関係はあくまでも限定的なものに留まってきたと言える。  

 第一に、露朝友好善隣条約にはソ朝友好協力相互援助条約のような相互防衛義務が含まれておらず現在の露朝は実質的にも法的にも同盟国ではない。第二に、プーチン政権下のロシアは北朝鮮に対して、武器もエネルギーも基本的には商業ベースでしか供与してこなかった。この点、毎年50万トンとも言われる原油を無償供与している中国とロシアの態度が大きく異なることが読み取れよう。  

 さらに決定的であったのが、北朝鮮が2006年に実施した最初の核実験である。これに対してロシアは「重大な懸念」を表明するとともに、北朝鮮に対する武器禁輸等を盛り込んだ安保理決議1718号に賛同。2007年には実際にほぼ全面的な武器禁輸措置を導入し、現在もこれは維持されたままである。  

 経済面でも、北朝鮮とロシアの関係は極めて薄弱なままである。2015年のデータでは、ロシアから北朝鮮への輸出額は7820万ドルであり、北朝鮮の全輸入額中、わずか2・3%でしかない。中国(29・5億ドルで全体の85%)はもちろん、インド(3・1%)にも及ばない額である(うち、約6割が石炭、25%が石油精製品)。さらに北朝鮮からの対露輸出に関して言えばわずか558万ドルで全体のシェアは0・2%であった(一方、中国は23・4億ドルで、全体の83%)。最近ではロシアと北朝鮮の貿易額が急増しているとも言われるが、元の貿易額自体が極めて小さいことを考えれば、そのインパクトは限定的であろう。 

 以上のように、ロシアと北朝鮮は自国の国益にかなうという条件においてのみ限定的な協力を行うパートナーである。今から10年前の2007年、紛争研究シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」が、露朝関係を「実利に基づく制限された友好関係」と位置付けたのは、その一例である。 

再びメジャー・プレイヤーへ?

 ところが金正日政権末期の2011年から金正恩政権成立直後の2012年頃には、露朝の急接近が観察されるようになった。ロシア側から軍、情報機関、ガス企業などの実務者が頻繁に訪朝する一方、北朝鮮側からは金正日総書記(これが彼の最後の外国訪問となった)や金石油工業相が訪露し、軍事協力の再開(軍人のロシア留学等)、約110億ドルの対北朝鮮債務のうち約100億ドル分の帳消し(これはほぼ北朝鮮のGDPに相当する額である)、南北縦断パイプライン建設に向けた合同委員会の設置などが次々と合意された。だが、実際に実現したのはロシアのハサンから北朝鮮の羅津港までの鉄道建設計画くらいであり、実際の成果には乏しかったと言わざるを得ない。この時期、中朝間の関係がかつてなく冷却化していたことから、ロシアがその隙間を埋めようとはしたものの、中国に代わるほどの後ろ盾とはなり得なかったと言えよう。

続きを読む

このニュースの写真

  • 朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠
  • 朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠
  • 朝鮮半島危機と関係していた!ロシアがこの隙に北方領土を軍事強化 小泉悠

「ニュース」のランキング