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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈8〉】不義密通は人間の業?

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈8〉】
不義密通は人間の業?

「週刊文春」の不倫報道を受けて会見する女優の斉藤由貴さん=8月3日、東京・有楽町の東宝本社(戸加里真司撮影) 「週刊文春」の不倫報道を受けて会見する女優の斉藤由貴さん=8月3日、東京・有楽町の東宝本社(戸加里真司撮影)

 彼は恋愛と結婚は別物だと考えていた。ドイツの社会学者、ヴェルナー・ゾンバルトは『恋愛と贅沢(ぜいたく)と資本主義』の中で、当時の欧州の貴族社会には自由恋愛(浮気)が蔓延(まんえん)していたが、結婚については彼のような保守的な考えが一般的だったと指摘している。

 《何といっても人は自分のために結婚するのではない。子孫のこと家族のことを、同等に・あるいはより多く・考えて結婚するのだ》と書く彼は、妻に女性としての幸せを与えることなく家事家政をよくすることのみを望んだ。その結果どうなったか。健康な肉体を持つ妻は結婚1周年を迎えぬうちに、彼の弟と関係を結ぶようになる。その3年後、弟の事故死をきっかけに事実を知った彼だったが、体面を保つために騒ぐことはなかった。

 37歳で法官を辞した彼が城の塔に籠もって『随想録』の執筆にいそしんだのは、冷めた夫婦関係も大きな要因となったはずだ。そして彼は妻の不義密通について、一般論として《女房を寝とられた印は拭いようのないもの、一度つけられたらそのしみは永久にぬけない》(第3巻第5章「ウェルギリウスの詩句について」)と記すのだ。

 不義密通は多くの場合、密通相手の家族を苦しみの底に突き落とす。人間であろうとするなら、男も女もそのことだけは忘れてはならない。

 ※モンテーニュの引用は全て関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』(国書刊行会)によった。=隔週掲載   (文化部 桑原聡)

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