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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈8〉】不義密通は人間の業?

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈8〉】
不義密通は人間の業?

「週刊文春」の不倫報道を受けて会見する女優の斉藤由貴さん=8月3日、東京・有楽町の東宝本社(戸加里真司撮影) 「週刊文春」の不倫報道を受けて会見する女優の斉藤由貴さん=8月3日、東京・有楽町の東宝本社(戸加里真司撮影)

江戸時代は死罪の重罪

 お白洲には正座する男と女。不義密通で女の亭主に訴えられたのだ。シラを切るふたり。そこで南町奉行の大岡越前守忠相(ただすけ)は女の飼い猫をふたりの前に放つ。男にじゃれつく猫…。それを確認した忠相はふたりに死罪を言い渡す。

 半世紀近く前に見たテレビ時代劇「大岡越前」の一場面である。いまなお記憶に残っているのは、加藤剛演じる優しい忠相が、殺人や強盗、放火を犯したわけでもない男女に死罪を言い渡したことに疑問を感じたからだろう。

 中世以前は性におおらかだった日本人だが、武家政権の鎌倉時代になってから一変する。なにしろ戦の多い時代だ。亭主は戦のために家を長期間空けることが多くなる。その間に女房に不貞をはたらかれてはたまらない。そこで亭主が安心して戦えるよう、人妻と間男に厳罰を課す法が定められる。人妻と関係を持った御家人は、所領の半分を没収されたうえで罷免、所領なき場合は遠流(おんる)、人妻も所領の半分を没収され、ない場合には遠流と、御成敗式目にある。

 時は流れて江戸時代、大岡忠相も編纂(へんさん)に携わった「御定書(おさだめがき)百箇条」(「公事方御定書」下巻)では、不義密通は死罪(斬首のうえ、試し斬り)、主人の妻との密通は獄門(市中引き回しのうえ、斬首。試し斬り後、首は晒(さら)し)と定めている。

 溝口健二監督が近松門左衛門の人形浄瑠璃「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」を映画化した「近松物語」を思い出す。経師屋の奥方、おさん(香川京子)と手代、茂兵衛(長谷川一夫)が不義密通の疑いをかけられ、最後には獄門となる。その「道行き」をとらえた撮影監督、宮川一夫の緊張感に満ちたモノクロ映像が、ひたすらにすばらしい。

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