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【WEB版 島を歩く 酒を造る】(2) あやうく自分が仕込まれることに… 

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【WEB版 島を歩く 酒を造る】
(2) あやうく自分が仕込まれることに… 

仕込みタンクの中の醪をかい棒で撹拌する松崎記者。脚立の上でちょっと腰が引けている 仕込みタンクの中の醪をかい棒で撹拌する松崎記者。脚立の上でちょっと腰が引けている

 高さ1・5メートルほどの脚立に登ると、蔵人3年目の仲原晃佑さん(27)から「かい棒」を手渡された。長さが3メートルほどの柄の先に、縦20センチ、横10センチくらいの板が直角に取り付けられた木の道具だ。ちょっと見ると、毛のないデッキブラシのようだ。タンクの中には、さっきまで作業していたのと同じ「麹」と、酵母を大量に発行させた「酒母」が入っており、ぶくぶくと泡を立てながら発酵が進み醪(もろみ)となっている。この醪を上部から、かい棒でかき混ぜて、さらに発酵を促すのだ。

 仲原さんに「香りを嗅いでみて」と促され、タンクに顔を近づける。ほのかな甘い香りに気を緩めていると、「手で仰いで嗅がないと、気絶しますよ」。タンク内には炭酸ガス(二酸化炭素)が充満しているので、酸欠状態になり危険らしい。危うく自分がタンクに落ちて仕込まれるところだった。

 仲原さんに聞くと、発酵とは「簡単に言うと酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに分解すること」だそうだ。だからタンク内には炭酸ガスが充満しているのだ。不勉強な自分を恥じた。

■「楽しかったです」とお別れ

 午後4時すぎ、再び麹室に入り、木箱に入った米麹をかき混ぜ、一定の酸素を供給し平らにする「仲仕事」とよばれる作業を行う。そのまま放置していると、麹菌が増殖し、温度が上がりすぎてしまうのだという。

 「ここから見ると誰がうまくできているかわかりやすい」

 尾畑酒造の専務、尾畑留美子さん(51)が麹室に入ってきた。尾畑さんがいると自然とその場の空気も明るくなる。人をひきつける不思議な魅力を持ち合わせている人だ。

 そんな尾畑さんから「ジャーナリストはうまく平らにできてないですよ」と厳しい言葉が飛ぶ。「えっ? オレのこと?」。よく見ると木箱の端が米麹で盛りあがっていて、中央が低いすり鉢状になっていることに気付く。急いで修正して、この日の作業は終了した。

 多ヶ谷さんとはこの日でお別れだ。自分の母親ほどの年齢だが、男性の中に交じって力仕事もてきぱきとこなし、すごいなあと思っていた。

 2日間で帰るのは多ヶ谷さんも心残りのようだ。「最後まで体験できないのは、非常に残念。でも日本酒造りの地道な作業の重要さを実感できて、とても楽しかったです」と感慨深げだった。(松崎翼)

 

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