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【至誠の人 楫取素彦物語(85)】中村紀雄 「行きますぞ、群馬に」

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【至誠の人 楫取素彦物語(85)】
中村紀雄 「行きますぞ、群馬に」

 大江卓の檄1

 若者たちは、あらゆる伝(つて)を頼って大江卓の所在を調べ外務省の一室で会えることになった。石島良三郎、竹越与三郎、高津仲次郎の3名が代表で上京した。

 待っていたのは2人の男であった。眼光鋭い、がっしりした男が言った。

 「わしが大江です。群馬の青年会と聞き、待っておりました」

 もう1人の男は、驚くべきことを口にした。

 「わしらは土佐者です。昔、長崎で情報を集める仕事をしておった。長崎では吉田松陰にも楫取素彦にも会った。楫取殿の武器買い付けを手伝ったことも、ジョン万次郎を紹介したこともあった。あの頃は幻馬と名乗っておった。楫取殿の活躍は常に遠くから見ておった。懐かしい限りだ」

 3人の若者の驚く顔を見ながら幻馬は言った。石島が続いた。

 「楫取様が下した廃娼令が、楫取様が去ってからおかしなことになりました。そこで、僕らは青年連合会をつくって廃娼の戦いを進めようと決意しました。つきましては発会の大会に、大江様のお話をお願いしたいということで参上いたしました。どうかよろしくお願い申し上げます」

 「うーむ、君たちとは妙な巡り会わせだのう。廃娼の火はわしらがつけたようなものだ。その火は群馬で燃え上がった。君たち若者もその炎のひとつらしい。行きますぞ、群馬に」

 大江はきっぱり言った。

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