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【スポーツ異聞】野球記念館、10年後の現実… 時代のヒーローも熱狂はいつか冷める

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【スポーツ異聞】
野球記念館、10年後の現実… 時代のヒーローも熱狂はいつか冷める

瀟洒な洋館のような佇まいの「松井秀喜ベースボールミュージアム」=石川県能美市(甘利慈撮影) 瀟洒な洋館のような佇まいの「松井秀喜ベースボールミュージアム」=石川県能美市(甘利慈撮影)

 スポーツ選手の業績をたたえる記念館はテーマパークの盛衰と似ている。「明と暗」。人気絶頂のうちは来館者でにぎわうが、月日の経過とともにファンの関心は遠のき、閑古鳥が鳴き始める。プロ野球選手は栄光の日々の証しとして記念館を建てたがるが、成功例は少ない。最近も野村克也氏の記念館構想が話題になった。ノムさんの故郷、京都・旧網野町(現・京丹後市)に現役時代のトロフィーなどが放置され、計画が頓挫しているという。いわゆる「文豪」の記念館と比較すると、野球選手の記念館は時代を超えて支持されにくい“泣きどころ”があるようだ。

 本州南端の和歌山県太地町。イルカ追い込み漁で有名な小さな町に「落合博満野球記念館」がある。

 落合氏といえば、生涯に3度、三冠王に輝いた最強打者である。秋田県が誇る野球人として有名だが、現役時代にイルカの町で自主トレを行ったことが縁で「別荘のような感覚」で建設。1993年12月の開館当初は、日本初の個人の野球記念館として注目を集めたが、閑古鳥が鳴くのは時間の問題だった。“破格”ともいえる2000円の入場料にも批判が絶えなかった。中日のGM職を追われカリスマ性が急落する中、記念館としての役割を終えているという声を聞く。

地方都市に多い野球記念館

 野球選手の歴史について広く知りたければ「野球殿堂博物館」(東京ドーム内)が最も充実している。しかし、個人に特化した記念館となると、生まれ故郷など地方都市にひっそりと建つケースが少なくない。

 ミスタープロ野球・長嶋茂雄氏の記念館は出身地の千葉県佐倉市の母校にある。また、2007年に福井市に開館されたミュージアムは、コレクターとしても知られた実業家、山田勝三氏が「ミスターの偉業を後世に伝える」という野球愛から生まれたが、ファンに惜しまれながら6年ほどで閉館に追い込まれた。

 今季、復活を期す松坂大輔の記念館はレッドソックス時代、父親の出身地である北海道稚内市内に建立。町おこしのシンボルとして期待されたが、来館者の激減で4年前に閉館。ソフトバンクなどで活躍した城島健司のベースボール記念館(長崎県佐世保市)も開館から約10年で閉鎖に至った。

語り継がれる「ゴジラ伝説」

 苦戦する野球記念館にあって比較的、評判がいいのが「松井秀喜ベースボールミュージアム」だ。1993年、故郷の石川県根上町(現・能美市)に、松井氏の父親によって建てられた。三角ベースで野球の面白さを知った少年時代に始まり、星稜高-巨人-ヤンキース…と渡り歩いた野球人生をたどる。星稜高時代、甲子園での「5打席連続敬遠」をはじめ数々の伝説に彩られたゴジラの奇跡を、ゆかりのユニホームやバット、インタビュー映像などで追体験できる。加賀の観光スポットとして紹介され、昨年、入館者が累計100万人を突破。引退から5年たった今も「ゴジラ人気」は顕在のようだ。落合記念館同様、鉄道アクセスはよくないが、こちらは入館料400円と財布にやさしい。

人気の鍵は「伝説」と「物語性」

 そもそも、ファンがひっきりなしに訪れる野球記念館はまれである。プロ野球史に詳しい編集者は「いかにその時代のヒーローといえど、次世代のファンを掘り起こしていかないと、経営的に『ジリ貧』の状況に陥る。昭和の名優、石原裕次郎の記念館でさえ閉館の憂き目に遭った。そもそも、記念館という発想自体、極めて昭和的。テーマパークが新機軸を打ち出さないと廃れるように、語り継がれる伝説と物語性がなければ、時代遅れの“箱物”になる」と手厳しい。

 数々の栄光の記録にスポットライトを当てるだけの記念館が閉館に追い込まれるのは、火を見るよりも明らか。「節税対策」という別の目的があるにせよ、現役のうちに記念館を建設するのはいかがなものか。

 野球人の記念館構想は、選手の引退後、ゆかりの球場、学校の一角に造った方が運営も楽である。「野球人の魂はボールパークに宿る」。いずれにせよ、野球選手の「伝説」が現役を退いた後も色あせずに語り継がれる時代は、とうの昔に終わっていることを心得るべきだろう。

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