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【至誠の人 揖取素彦物語(48)】中村紀雄 「私も孟子でいこう」

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【至誠の人 揖取素彦物語(48)】
中村紀雄 「私も孟子でいこう」

■龍馬3 

 「やあ、突然お呼びだてしてすまない。木戸殿との連絡、大役ご苦労でした。まずは一献」

 幻馬が伊之助に盃(さかずき)をすすめた。

 「私の役目は身に余る大役。長州は、何せ、禁門の変以来、薩摩を怨(うら)んでおるにちがいないからな」

 こう話す龍馬の表情は、言葉とは裏腹に何も苦にしていない様子である。

 「長州は滅亡の淵(ふち)に立っている。昨日の敵は明日の救いの神。龍馬よ、おはんには似合いの役だ」

 「幻馬殿は簡単に申すがこの酒も飲み納めになるかもしれぬ。は、は、は」

 龍馬は豪快に笑った。

 「神に祈る心地ですぞ。その後も木戸には何かと情報を伝えて準備を進めています。幕府の密偵も神経をとがらせている。不心得な刺客にも十分気をつけてくだされ」

 伊之助は酔えぬ表情で言った。

 「は、は、いざというときは、こういう用心棒もいる」

 龍馬は懐から、ずしりと重そうな短銃を取り出してみせた。

 「幻馬殿からもらったイギリス製の業物(わざもの)。これまでも何度か助けられた」

 「それに頼るようでは今度の交渉は成功しないぞ。命を捨てて誠意を伝えることだ。おはんの身辺はわしらが守るから、心配しなくともよい」

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