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【作家・村田沙耶香に聞く】「セックスなんてよくできるわね、あんな汚いこと」 新刊「消滅世界」で常識に揺さぶりかけて…

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【作家・村田沙耶香に聞く】
「セックスなんてよくできるわね、あんな汚いこと」 新刊「消滅世界」で常識に揺さぶりかけて…

書き終えて「小説ってこんなに自由なんだ、と実感できた」と話す村田沙耶香さん 書き終えて「小説ってこんなに自由なんだ、と実感できた」と話す村田沙耶香さん

 夫婦のセックスは近親相姦と忌み嫌われ、家族も古びた制度に過ぎない-。三島賞作家、村田沙耶香さん(36)が新刊『消滅世界』(河出書房新社)で描くのは、人工授精で子を授かるのが一般的になり、性交や家族、男女の差すら消えゆく世界。当たり前のように信じている常識に揺さぶりをかける長編の執筆を「いろんな価値観が崩れていく不思議な体験だった」と振り返る。

(海老沢類)

 〈セックスなんて昔の交尾の名残〉〈よくできるわね、あんな汚いこと〉…。先の大戦をきっかけに人工授精の技術が飛躍的に向上したもう一つの日本。主人公の少女・雨音が生きるのは、セックスが過去の遺物とされ、物語のキャラクターとの恋が「清潔」と言われる世界だ。出産はコンピューターで管理され、男性が使う「人工子宮」の開発も進む。本能に根ざすはずのセックスや恋、家族が消えていく無菌室のような“楽園”が淡々と描かれる。

少数派の苦悩

 奇抜な設定だが日常で得た実感が出発点にある、と村田さんは言う。「身近な友達にも夫婦として愛し合ってはいるけれど、セックスはしたくないという人はいる。それを周りから変だ、とみられて我慢してもいる。そうやって苦しむ人がもっと楽に生きられる世界を想像してみたかった」

 そんな世界は新たな苦しみも生む。雨音は親から愛やセックスを大切にする価値観を教えられて育った。この物語では少数派の彼女が、セックスを嫌がる男性との恋に傷つき、正常と異常のはざまで揺らぐ姿が「正しさ」とは何かを問いかける。「私たちがときに感情的に振りかざす正義って、何なんだろうな?って。同時代にも複数の価値観は存在するのに、自分の狭い世界の正義をひたすら信じて、それで誰かを平然と裁くことに対して恐怖を感じる」

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