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【番頭の時代】第3部「スポーツを支える黒子」(1) 「素人」だからこその裁定 全柔連専務理事 近石康宏

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【番頭の時代】
第3部「スポーツを支える黒子」(1) 「素人」だからこその裁定 全柔連専務理事 近石康宏

近石康宏・全日本柔道連盟(全柔連)専務理事 =東京都文京区(大西史朗撮影)

 「私は柔道の素人だから」

 全日本柔道連盟(全柔連)専務理事の近石康宏(66)は、就任から1年9カ月たった今も、こう言ってからりと笑う。東大柔道部OBで元警察官僚の経歴は、世間的には通りがよい。競技実績がものを言う柔道界では逆に、下風に置かれる。そんな境涯が、近石にとっては「強み」だという。

 東京都文京区にある全柔連の執務室で、近石は副会長の山下泰裕(57)と机を並べる。「こういう取り組みをしたい」と語る山下に、近石は「いやいや、社会の常識から見れば理解されない。やめた方がいい」。

 203連勝、ロサンゼルス五輪金メダル、国民栄誉賞。柔道の枠を超えて盛名を響かせる山下に、近石ははばかりなく意見する。その光景は周りの柔道関係者をあわてさせるが、2人にとっては日常の一コマに過ぎない。柔道界の慣習に染まらず、適度に距離を置き、必要ならずばりとモノを言う-。近石に「素人」の割り切りがあるからこそ、山下との間で対等な関係も成り立つ。

 近石が専務理事に就いたのは平成25年8月21日だった。その年、柔道界はかつてない危機にあった。1月末に前女子代表監督による代表選手への暴力的指導が露見し、3月には強化幹部らが助成金を不正に積み上げた内部留保金も問題に。元五輪金メダリストの上村春樹前会長ら執行部が退陣し、後任に就いたのが新日鉄住金会長の宗岡正二(69)だった。

 「副会長に山下、専務理事に近石」は、東大柔道部OBの宗岡が就任受諾と引き換えに示した人事案である。近石は2学年下の後輩だが、大阪府警本部長など警察官僚として腕を振るった力量を、宗岡は高く買っていたという。

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