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【主張】総裁選と人口減少 複合型政策への転換急げ 社保改革のみでは解決せぬ

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【主張】
総裁選と人口減少 複合型政策への転換急げ 社保改革のみでは解決せぬ

 日本が、少子高齢化や人口減少社会をどのように乗り越えていくか。その解決策を見いだすことは政治の大きな責任だ。自民党総裁選で論ずべき、極めて重要なテーマである。

 年金や医療、介護といった社会保障制度の改革はもちろん、公共交通機関の確保や高齢者が暮らしやすい住宅環境の整備など、喫緊の課題は山積している。

 財源の確保もさることながら、若い世代が激減していき、行政や公的サービスの担い手の確保が難しくなることを考えれば複合的な政策展開が欠かせない。

 安倍晋三首相と石破茂元幹事長には、この問題を正面から論じ合ってもらいたい。

 ≪一度立ち止まり検証を≫

 社会の支え手となる若い世代が減る一方で、手助けを必要とする高齢者は激増する。その対策は、長らく社会保障の課題と位置づけられてきた。

 だが、少子高齢化や人口減少は国民生活のあらゆる場面に影響する。社会保障制度の枠内だけで解決できないことを認識すべきだ。問題をもっと広く捉え、大きな枠組みで政策を展開していかなければ追いつかない。

 安倍首相は、昨年の衆院選で少子高齢化を「国難」と呼んだが、その後、めぼしい対策を打てないでいる。石破氏は総裁選への出馬表明に際して人口減少への危機感を示した。「国民会議」設置は表明したものの、どのように改革を進めていくのか明確ではない。

 聞きたいのは、人口が減る状況に耐え得る社会への作り替えの決意であり、それを実現するための具体的な道筋だ。多様な政策をどう組み合わせていくのか、トップリーダーの構想力が問われる。

 毎年数千億円ずつ伸び続ける社会保障費の抑制は最重要課題だった。放置していたなら財政赤字はさらにかさんでいた。これを踏まえれば、改革の意義は大きかった。今後も、支払い能力のある人に一層の負担を求め、無駄をなくす努力を怠ってはならない。

 ところが、政府は平成31年度予算について社会保障費の抑制目標を明示していない。厚生労働省は概算要求で6千億円超の自然増を見込むが抑制機運がしぼむことが懸念される。

 他方、国民負担やサービスのカットには限度がある。「抑制一本やりでは制度が瓦解(がかい)する」との不安が国民に広がっている。その「頃合い」をどこに置くか、立ち止まって検証する必要がある。

 取り上げるべき論点は多い。75歳以上の1人暮らしはこれから激増する。これまでのように各地にまばらに住むのでは、それぞれの生活を支えるために莫大(ばくだい)な行政コストがかかる。

 高齢者の生活を支える社会保障サービスを縮小していくことで、見守りといった他の行政経費がかえって膨らんでは意味がない。

 ≪「在宅シフト」を見直せ≫

 たとえば、最低保障機能の強化が模索されてきた年金である。財源の確保が壁となってきた。ならば、現在の年金額で暮らせる社会を築く発想を持ってはどうか。年齢にかかわらず働ける選択肢を広げ、高齢者向けの低家賃住宅を提供するなど多様な政策を組み合わせるべきだ。

 医療や介護も、病院や施設から「在宅」へのシフトが進められてきた。政府は、暮らし慣れた地域で老後を過ごせるよう地域包括ケアシステムに力を入れている。

 だが、「在宅」には、洗濯や買い物など日常生活を支える存在が不可欠だ。若い世代が激減し、高齢の医師が引退したら「無医地区」になる地域が拡大する。

 介護現場は慢性的な人手不足だ。外国人労働者の受け入れを増やしても要介護者の増大に追いつける保証はない。昨年の介護離職は10万人弱にも及ぶ。人手不足が懸念される時代に小さくない数字だ。地域包括ケアシステムは絵に描いた餅になりつつある。

 「在宅」は本当に歳出抑制に有効なのか疑問符がつく。社会の支え手不足が深刻化する点を勘案すれば、少ないスタッフで病人や要介護者に対応する方向へ政策転換していく時期を迎えている。元気なうちに地域ごとの拠点に集まり住み、体が弱ったら効率よく医療や介護を受けられる新たな「住まい方」を編み出したらどうか。

 これからのリーダーには、コンパクトでスマートな社会の構築を急ぐ視点をもってほしい。

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