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【正論】「植民地は放棄せよ」「外交は損得勘定で」…ポピュリズムに抗した石橋湛山 大阪大学名誉教授・猪木武徳

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【正論】
「植民地は放棄せよ」「外交は損得勘定で」…ポピュリズムに抗した石橋湛山 大阪大学名誉教授・猪木武徳

猪木武徳大阪大学名誉教授 猪木武徳大阪大学名誉教授

 そうした状況で重要になるのは、その社会に「言論・思想の自由」を実践できる「気概」があるか否かという点だ。戦前の日本で、それを勇敢に実践した知識人の一人が石橋湛山であった。彼には、政治も経済も、言論・思想の自由をベースに動くという強い確信があった。つまり何事にも自由な気概が重要だというのである。

 ≪徹底した合理主義的リアリズム≫

 ともすれば石橋湛山は、その理想主義的な側面のみが強調され論じられる。しかし彼は同時に徹底したリアリストでもあった。「金解禁論争」における彼の現実感覚の鋭さはよく知られているが、政治にかかわる発言や論考も徹底した合理主義に貫かれている。

 その例を3つほどあげておこう。

 まずワシントン会議前の1921年に『東洋経済新報』「社説」に発表した「大日本主義の幻想」で説いた「小日本主義」である。ここで彼は、合理的な計算に基づいて植民地経営の経済コストの大きさを指摘し、ナショナリズムを傷つけるだけで大した利益ももたらさない植民地は放棄せよと論じたのである。

 彼の外交論の厳しさにも注目すべきであろう。独ソ不可侵条約(39年8月)を「複雑怪奇」と考えた「世間知らず」の日本外交を批判し、外交は商売であるから嘘や無礼のない限り、損得勘定でなされるべきだと論じた。(「ドイツの背反は何を訓えるか」)

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