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【古典個展】
獣医学部増設の意義 大阪大名誉教授・加地伸行
そんな当たり前のことなどどうでもよい。むしろ獣医学部設立の意味、いや意義を論戦すべきではないのか。
獣医学部は、加計学園のそれを突破口にして、さらに増設すべきなのである。なぜか。今回の問題において、ペットの獣医師が不足などとあったが、それは端々のこと。あえて言えば、日本いや世界の運命に関わる課題解決のために、獣医学部増設が必要。その理由は2点。
その1。医学部婦人科の重要研究部門は生殖。しかし、医学部では人体実験を行うことは、法的にも倫理的にも許されない。獣医学部では、動物実験ができる。それも大型動物を使えるので、人間の生殖分野における基礎研究ができる。その成果を基礎にして、医学部における生殖研究を前進させうる。将来的には共同研究となろう。
その2。日本は海洋国家であり、動物性タンパク質は魚類から得てきた。しかし、中国に由る海洋汚染は益々広がり、将来、魚類の安全性の保証がない。
とすれば、飼料の安全性を確保しつつ、安全な牛豚などから動物性タンパク質を自前で確保する必要がある。その飼育や増殖には、獣医学部の力が必要である。
忖度問題ではなく、国家戦略の観点から見るべきである。
『詩経』小旻篇に曰く、人はその一[方面]を知るのみにして、その他を知るなし、と。 (かじ のぶゆき)