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【世界記憶遺産】南京事件登録で中国は周到に準備 日本挽回できず 「すべてが遅すぎた…」

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【世界記憶遺産】
南京事件登録で中国は周到に準備 日本挽回できず 「すべてが遅すぎた…」

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)記憶遺産に中国が申請した「南京大虐殺文書」の登録をめぐり、水面下で展開された日中間のせめぎ合いの様子が明らかになった。時間をかけて関係者とのネットワークを築いてきた中国に対し、今年夏ごろから中国側の登録阻止の取り組みを本格化させた日本。最終局面で日本側は巻き返しを図ったが、審査プロセスの不透明さもあって挽回できなかった。

 アラブ首長国連邦のアブダビ市内で10月4日から開かれた国際諮問委員会(IAC)の審査初日。中国側関係者が委員らに親しげに話しかけながら、中国からの土産を手渡していた。

 中国側関係者には中国中央档案館(資料館)の李明華副館長や南京大虐殺記念館の朱成山館長らの姿もあった。IAC委員と「かなり親密な様子だった」(日本側関係者)という。

 中国は昨年3月末までに「南京大虐殺文書」と「慰安婦関連資料」の登録を申請。以来、IACの下部組織のアジア太平洋地域委員会や、IACに大きな影響力を持つ登録小委員会に「相当な攻勢をかけていた」(日本政府関係者)。

 日本側は世界文化遺産の対応に追われていたため、記憶遺産に本腰を入れたのは今年7月ごろだった。記憶遺産に詳しい人物から助言を得て、学者を通じてユネスコ関係者に中国の申請案件に関する説明を続け、一時は「圧勝モードだった中国とほぼ互角になった」(別の関係者)という。

 危機感を持った中国は、記憶遺産担当代表団の一人を解任して10月のIACの審査に臨んだ。日本側関係者は「中国側で高度な政治判断が働いたようだ」と指摘する。

 実際、IACの審査では、小委員会が「南京」の登録を勧告したにもかかわらず委員の議論は真っ二つに割れた。事態を収拾するため採用されたのは多数決。だが、僅差で「南京」の登録が確定した。土壇場で鍵を握ったのは、中国側の思惑が反映された小委員会報告書だったという。

 6日に結果を伝えられたユネスコのイリナ・ボコバ事務局長は翌日、パリで会った松浦晃一郎前事務局長に、プロセスに「透明性がない」と漏らした。

 その後、ボコバ氏は中国の張秀琴・ユネスコ大使を介して、中国政府に日本側と対話を持つよう要請。中国外務省幹部と木寺昌人駐中国大使の対話が実現した。この直接対話の行方を見極めるため、ボコバ氏は登録結果の発表を現地時間の9日午後(日本時間10日未明)まで遅らせた。

 日本側は土壇場でボコバ氏から配慮を引き出したものの、結果は覆せなかった。日本政府関係者は「すべてが遅すぎた」と悔やんだ。

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