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現代美術家・杉本博司が手がけたアートプロジェクト【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

白洲信哉 旅と美

現代美術家・杉本博司が手がけたアートプロジェクト【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

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現代美術家・杉本博司が手がけたアートプロジェクト【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

 写真、展覧会に、ギャラリーの内装や、文楽、浄瑠璃などの伝統芸能と、折々に触れ杉本さんの世界に親しんでいるが、随分前から小田原の地で、壮大な構想を実現するべく、心血を注いでおられることは知っていた。

 「測候所」という馴染みの無い名称だが、杉本さんは「今、時代は成長の臨界点に至り、アートはその表現すべき対象を見失ってしまった。私達に出来ること、それはもう一度人類の意識の発生現場に立ち戻って…」と述べ、「新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。天空を測候することにもう一度立ち戻ってみる、そこにこそかすかな未来へと通じる糸口が開いているように私は思う」という意思を形にしたのである。

 ギャラリー、舞台、茶室など、個々に説明する紙幅はないが、ちまたに溢れている商業空間ではなく、未来永劫現在進行形で進化していくような、自然とともに姿、形をかえていく場のように僕には思えた。

 杉本さんの作品と接していて気持ちが良いのは、根底にながれている不変の美学が明確なことで、詰まらないスローガンや、デザイン優先のこけ脅しのようなことが皆無なのだ。ただ、あまりの逸品揃いに、「この野郎」とときには思わない訳ではないが、念じれば寄ってくるから仕方が無い。

 構想から十数年かけ、今月9日に完全予約、入替制でオープンした。運が良ければ、この稀に見る空間を独占出来るかもしれないが、惜しむらくは水曜休館(2018年2月より火曜日、水曜日休館)と、開館時間が10時ということ。

 醍醐味である日の出を拝めないし、夏至や春分が水曜に当たる事もあるので、報道用に配られた実景を感じる時間設定がないのである。

■小田原文化財団 江之浦測候所のHP (文・パノラマ写真 白洲信哉氏)
(撮影機材:リコー THETA S )

白洲信哉(しらす・しんや) 白洲信哉(しらす・しんや)  文筆家。昭和40年生まれ、東京都出身。日本文化の普及に努め、展覧会など文化イベントの制作にも携わる。平成25年から骨董(こっとう)・古美術の月刊誌『目の眼』編集長。