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view 繁殖 新たなステージへ トキ放鳥10年・佐渡島

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view 繁殖 新たなステージへ トキ放鳥10年・佐渡島

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水田を低空で舞うトキ。繁殖で真っ黒になった羽は6月から10月にかけ、全て美しいとき色に抜け替わる =新潟県佐渡市(大山文兄撮影) 水田を低空で舞うトキ。繁殖で真っ黒になった羽は6月から10月にかけ、全て美しいとき色に抜け替わる =新潟県佐渡市(大山文兄撮影)

 初夏の里山をやさしく包み込むそよ風。エサを捕りにきたトキが、水田を滑るように舞い降りる。新潟県の佐渡島で、トキ10羽の試験放鳥が行われて今秋で10年。環境省は今月6日、島内で1年以上生存している個体数が目標の220羽を超えたと発表した。

 2年前倒しでの目標達成。だが、懸念されるのが遺伝的多様性の乏しさだ。日本で飼育、または生息している全てのトキは、中国から贈呈・供与された5羽(雄2羽、雌3羽)の子孫になる。国内で飼育する個体の交配は計画的に行っているが、それでも人間に例えると、めいと叔父、おいと叔母などの関係だ。人間の管理が及ばない野生下では、きょうだいペアの子供も誕生している。

初夏の水田はエサの宝庫。次々とミミズやドジョウを捕まえていた =新潟県佐渡市(大山文兄撮影)
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初夏の水田はエサの宝庫。次々とミミズやドジョウを捕まえていた =新潟県佐渡市(大山文兄撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 こんな中、今年5月の日中首脳会談で、11年ぶりにトキの雌雄1羽ずつ計2羽の提供が決まった。トキの生態に詳しい新潟大学の永田尚志教授は「供与はうれしい」としながらも「重要なのはどんな遺伝子を持っているのか」と気をもむ。日本側は最初の5羽と違う遺伝子のトキを希望しているが、中国側から個体の遺伝情報は届いていないという。

 新たなトキは、早ければ今年度中にも日本にやってくる。2羽はカップルではなく、それぞれ相手を佐渡市の施設で探す。日中間の覚書で繁殖した個体の一部は中国へ返還される。その比率は半数程度と高い。永田教授は「つがいの子孫の放鳥まで5年はかかる」とみる。返還を免れた個体が種親になり、その子供が成鳥になって初めて放鳥対象になるため、時間がかかるのだという。

 過去10年間のモニタリングでは、人間に飼育されて育ったトキよりも、自然の中で孵化(ふか)し育った個体のほうが、生存率や繁殖実績が高いことが分かっている。

 永田教授は「今後は放鳥する個体の数よりも、その“質”にこだわることが重要」と強調する。トキの将来を見据えた繁殖計画が求められている。(写真報道局 大山文兄)

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