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【白洲信哉 旅と美⑲】勇壮な神鹿角切り(宮城・金華山)

伝統・文化

【白洲信哉 旅と美⑲】勇壮な神鹿角切り(宮城・金華山)

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昭和38年に始まった金華山と、奈良だけの大変珍しい行事。角を切り終えた雄鹿は、体重測定の後に山へ戻っていく=10月1日、宮城県石巻市 (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリF4.5-5.6、F11 1/200sec ISO 200) 昭和38年に始まった金華山と、奈良だけの大変珍しい行事。角を切り終えた雄鹿は、体重測定の後に山へ戻っていく=10月1日、宮城県石巻市 (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリF4.5-5.6、F11 1/200sec ISO 200)
角きり場から放たれた雄鹿を、多数の勢子により赤い旗を持って、反時計回りに追い立て、投げ縄により捕獲する。(PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリ    F4.5-5.6、F8 1/320sec ISO 100)
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角きり場から放たれた雄鹿を、多数の勢子により赤い旗を持って、反時計回りに追い立て、投げ縄により捕獲する。(PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリ F4.5-5.6、F8 1/320sec ISO 100)フルスクリーンで見る 閉じる

 10月、古都奈良の、成長した雄鹿の角を切る行事は、江戸時代初頭から伝わる風物詩だが、同じ頃、黒潮と親潮が合流する宮城県東部、牡鹿半島の沖に浮かぶ金華山(同県石巻市)に生息する約500頭のうち、黄金山神社境内周辺にいる約10頭の角を切る勇壮な行事が行われている。

横にして取り押さえ、水をのませ目隠ししたのちに、神職により角を切る勇壮な行事である (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリ F4.5-5.6、F8 1/640sec ISO 200)
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横にして取り押さえ、水をのませ目隠ししたのちに、神職により角を切る勇壮な行事である (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリ F4.5-5.6、F8 1/640sec ISO 200)フルスクリーンで見る 閉じる

 奈良との関わりは古く、天平21(749)年、聖武天皇は、陸奥守の百済王敬福(きょうふく)から、大仏建立のために黄金900両を差し出されたという記述がある。以来、陸奥は黄金伝説の地となり、「こがね花咲くとよみ奉たる金花山、海上に見わたし…」と芭蕉も記した。

雄鹿は秋になると発情期をむかえ、角が鋭くなるため、参拝客の安全に配慮し、角を切る行事である (PENTAX K-1、HD PENTAX-D FA28-105ミリ、F11 1/200sec ISO 200)
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雄鹿は秋になると発情期をむかえ、角が鋭くなるため、参拝客の安全に配慮し、角を切る行事である (PENTAX K-1、HD PENTAX-D FA28-105ミリ、F11 1/200sec ISO 200)フルスクリーンで見る 閉じる

 離島ののんびりした雰囲気の中で、投げ縄が角にかかり、また鹿が巧みにかわしたりする度に歓声が起こり、無事角が切られ再び山に戻ると一同拍手でたたえる。

金華山は、島全体が黄金山神社の神域となっており、恐山、出羽三山と並ぶ「奥州三霊場」に数えられている (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリF4.5-5.6、F11 1/200sec ISO 200)
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金華山は、島全体が黄金山神社の神域となっており、恐山、出羽三山と並ぶ「奥州三霊場」に数えられている (PENTAX K-1、HD PENTAX FA80-320ミリF4.5-5.6、F11 1/200sec ISO 200)フルスクリーンで見る 閉じる

 僕は古い春日曼荼羅(まんだら)に、神鹿の上に鹿島の神が降りてくる画が思い浮かんだ。上総守であった敬福は、航海神である鹿島神とともに、黒潮に乗り漂着、陸奥守として再任し、黄金を発見したのだ。

 天皇は産金に歓喜し、陸奥国の租税は免除されたというが、金華山の鹿も、黄金伝説の功労者として、中央の神へと昇華し、長らく人との共生を果たしたように思えてきたのだった。

白洲信哉(しらす・しんや) 白洲信哉(しらす・しんや) 文筆家。昭和40年生まれ、東京都出身。日本文化の普及に努め、展覧会など文化イベントの制作にも携わる。平成25年から骨董(こっとう)・古美術の月刊誌『目の眼』編集長。

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