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〝猫仏〟に愛猫の息災祈願 山口の猫寺「雲林寺」

生き物

〝猫仏〟に愛猫の息災祈願 山口の猫寺「雲林寺」

更新 sty1707140011
「猫仏」の前でポーズをとってくれたのは角田住職の愛猫「サラちゃん」。推定20歳を超えるおばあちゃん猫なのだそう。まだまだ元気に長生きしてね!=山口県萩市(尾崎修二撮影) 「猫仏」の前でポーズをとってくれたのは角田住職の愛猫「サラちゃん」。推定20歳を超えるおばあちゃん猫なのだそう。まだまだ元気に長生きしてね!=山口県萩市(尾崎修二撮影)

 山口県萩市にある「雲林寺」は近年、猫好きの間で人気の「猫寺」だ。
 市街地から島根県津和野町方面へ車で約30分という、決して至便とは言い難いこの寺に、飼い猫の健康長寿を祈る人や、名物となったたくさんの猫グッズを目当てに来る人が後を絶たない。

雲林寺の本堂に鎮座する「猫仏」=山口県萩市(尾崎修二撮影)
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雲林寺の本堂に鎮座する「猫仏」=山口県萩市(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 雲林寺が猫寺と呼ばれるようになった経緯を、角田慈成住職に尋ねたところ、諸説あると前置きの上で、次の様な伝説を「あくまでもきっかけの一つ」として聞かせてくれた。
 寛永2年、長州藩の藩祖・毛利輝元が逝去した際、主君に殉じて自死した家臣・長井元房の愛猫が主人の死後、墓のある輝元の菩提寺・天樹院から離れようとせず、四十九日の法要後、元房の後を追うように自ら舌をかんで死んでいた。その後、元房の自宅の前を通ると、猫の鳴き声が聞こえたため、天樹院の僧侶が猫を供養したところ、鳴き声はおさまった。今では廃寺となり、墓所だけを残す天樹院の末寺が、この雲林寺なのだそう。

猫は決して〝恩知らず〟ではない?

雲林寺の本堂内、木彫りの猫にまぎれて黒猫の姿。角田住職の愛猫「クロマメ」ちゃん=山口県萩市(尾崎修二撮影)
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雲林寺の本堂内、木彫りの猫にまぎれて黒猫の姿。角田住職の愛猫「クロマメ」ちゃん=山口県萩市(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 猫好きの心を大きく揺さぶる〝忠猫〟の、安らかな眠りを祈らずにはいられない。このように、萩市は猫に浅からぬ因縁のある場所なのかもしれない。
 「猫は三日で恩を忘れるなんて言われますが、そんなことはないと思いますよ」と笑う角田住職。
 岡山県に生まれ、広島県三原の佛通寺で雲水として修行中のある日、菓子箱に入れられた捨て猫を保護した。
 まだ目も開いていない子猫を見かね、師匠に相談すると「雲水という、いわば居候の身で、さらに居候を増やすつもりか?」と叱られたという。ところがその夜、部屋のふすまが少しだけ開いてミルクとキャットフードが差し入れられた。その手は師匠のものだった。「(おおっぴらには言えないが)何とかしてやれ」という、師匠の優しさに感じ入った角田住職だった。
 その後、平成8年に縁あって山口で住職を務めることとなり、今では自宅で4匹の猫が家族の一員として暮らしている。

猫寺として知られる「雲林寺」の山門には、狛犬ならぬ「招き猫」が参拝者をお出迎え=山口県萩市(尾崎修二撮影)
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猫寺として知られる「雲林寺」の山門には、狛犬ならぬ「招き猫」が参拝者をお出迎え=山口県萩市(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 寺の内外、至る所に鎮座する、生き生きとした表情の木彫りの猫は、友人のチェーンソーアーティスト・林隆雄さんの作品。海外の大会での優勝経験もある実力者とあって、どの猫も、今にも動き出しそうな躍動感にあふれている。中でも、寺の顔となっている「猫仏」は、自身の気になる部位をなでることで御利益があると参拝者に人気だ。角田住職が丁寧に描く、愛らしい猫をモチーフとした御朱印も目玉の一つ。寺にはさらに住職自身が収集したもの、参拝者からの贈り物など、数え切れないほどの猫グッズで埋め尽くされた部屋もあって、一歩足を踏み入れると「猫の世界」にどっぷりと浸かってしまうに違いない。

猫が導く縁がある

御朱印を書く様子を見せて下さった雲林寺の角田住職。慈愛に満ちた表情の招き猫がモチーフの御朱印だ=山口県萩市(尾崎修二撮影)
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御朱印を書く様子を見せて下さった雲林寺の角田住職。慈愛に満ちた表情の招き猫がモチーフの御朱印だ=山口県萩市(尾崎修二撮影)フルスクリーンで見る 閉じる

 「猫だらけ」になってからはせいぜい7、8年だというが、SNSをきっかけにテレビや雑誌など、各種メディアに取り上げられ、参拝者は大幅に増加した。
 九州、沖縄、北海道…国内各地はもとより、香港・台湾、遠くはイギリス、ブラジルなど世界中から訪れるという。
 こうして「猫寺」として知られるようになった今、角田住職は「地の果てみたいな田舎に、日本各地、さらには海外からも、たくさんの人がお参りに来てくださる。ただそれだけがありがたくて嬉しい…その一言です」と静かな笑顔を見せる。
 猫が導く「仏の道」、そして「猫と人」との縁(えにし)を感じさせる住職の言葉に、この地を目指す人が絶えない〝もう一つの理由〟を見た気がした。(写真報道局 尾崎修二)

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