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【はたらくいきもの】豊かな水田 僕らが守る アイガモ農法(兵庫・三田市)

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【はたらくいきもの】豊かな水田 僕らが守る アイガモ農法(兵庫・三田市)

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田んぼを闊歩(かっぽ)するアイガモの“パトロール隊”。エサを探す時も寝る時も、いつも群れで行動する =5月29日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影) 田んぼを闊歩(かっぽ)するアイガモの“パトロール隊”。エサを探す時も寝る時も、いつも群れで行動する =5月29日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS-1D X:EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USM
水中にくちばしを突っ込んで えさを探すアイガモのヒナ =5月29日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)
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水中にくちばしを突っ込んで えさを探すアイガモのヒナ =5月29日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS-1D X:EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USMフルスクリーンで見る 閉じる

 「ピーピーピー」。5月末、田植えを終えたばかりの水田に、かわいい鳴き声が響いた。声の主は、100羽近いアイガモのヒナ。子供たちの手で、田んぼに放たれると、勢いよく水中に飛び込み、エサをついばみ始めた。害虫や雑草を食べてくれるヒナたちは、環境に優しいアイガモ農法を支える“田んぼのパトロール隊”だ。(写真報道局 渡辺恭晃)

農業を学ぶ授業の一環で、アイガモのヒナを放つ三田市立本庄小学校の児童。ふわふわした愛らしい姿に歓声が上がった =5月29日(渡辺恭晃撮影)
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農業を学ぶ授業の一環で、アイガモのヒナを放つ三田市立本庄小学校の児童。ふわふわした愛らしい姿に歓声が上がった =5月29日(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS-1D X:EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USMフルスクリーンで見る 閉じる

 兵庫県三田市須磨田地区で、アイガモ農法を営むのは5農家。そのうちの1軒、福本妙子さん(75)が、アイガモ農法を採り入れたのは平成12年のこと。「親から受け継いだ大事な田んぼに、生き物が暮らせる環境を取り戻したかった」と話す。化学肥料や農薬を使った稲作は、手間は少ないものの、ドジョウやカエルがいなくなるというマイナス面もあるからだ。

 毎年、大阪府松原市にある河内鴨の専門店「ツムラ本店」からヒナを分けてもらう。

 パトロール隊は、夜明けとともに出動し、雑草やウンカなどの害虫を食べる。フンは肥料となり、水かきでかき混ぜられた水田は、雑草が育ちにくくなる。

生まれたばかりのアイガモが、小さな羽を広げて伸びをする =5月18日、大阪府松原市のツムラ本店(渡辺恭晃撮影)
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生まれたばかりのアイガモが、小さな羽を広げて伸びをする =5月18日、大阪府松原市のツムラ本店(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS-1D X:EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USMフルスクリーンで見る 閉じる

 とはいえ、エコなアイガモ農法は苦労も多い。イタチやカラスに、放ったばかりのヒナを襲われ全滅しかけたこともある。水田に防鳥ネットを張ってカラスの侵入を防ぎ、イタチは電柵を設けて撃退した。

 だが、今年になって、キツネが出没。電気の通っていない場所から水田に入り込み、5月に放鳥した半数近くが襲われ、40羽を追加で放すことになった。

 福本さんは「弱肉強食だと分かっていても、死んでしまったアイガモを見ると、くじけそうになった」という。電柵を強化したり、ロケット花火で追い払ったりして乗り切った。

エサをたくさん食べてすくすくと成長したアイガモ。稲と同じくらいまで大きくなった =7月30日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)
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エサをたくさん食べてすくすくと成長したアイガモ。稲と同じくらいまで大きくなった =7月30日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS 6D Mark Ⅱ:EF17-35mm F2.8L USMフルスクリーンで見る 閉じる

 7月末、青々と茂った稲がゆれ、泥だらけのアイガモがやってきた。稲穂の間をすいすいと泳ぎ回る姿にヒナの頃の面影はない。

 収穫が近づくと、パトロール隊も役目を終える。田んぼを去ったアイガモは、合鴨の肉として消費者に届けられるという。

水中にくちばしを突っ込んでエサを探すアイガモ =7月27日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)
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水中にくちばしを突っ込んでエサを探すアイガモ =7月27日、兵庫県三田市(渡辺恭晃撮影)キヤノン EOS-1D X:EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USMフルスクリーンで見る 閉じる

 「お米を育ててくれたアイガモたちに感謝の気持ちでいっぱい」と話す福本さん。アイガモが守ったごはんを囲んで「いただきます」の笑顔が広がるのを楽しみにしている。



 【アイガモ】アヒルと野生のマガモの交雑交配種。アイガモ農法は、平成の初めごろ、農薬に頼らない米作りとして脚光を浴びた。全国各地で採り入れられるが、人工品種のため野生下への放鳥は禁止されている。

企画制作:産経デジタル