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【動画】view 大けがから8年 親に… 放鳥トキの「84番」

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【動画】view 大けがから8年 親に… 放鳥トキの「84番」

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大けがを克服し、初めて3羽のヒナを巣立たせた84番の雄(右から2羽目)。両脇は親と同じ大きさにまで成長した若鳥。左は3歳雌 =新潟県佐渡市(大山文兄撮影)

 今秋、試験放鳥開始から10年を迎える新潟県・佐渡島のトキ。環境省によると、今春の繁殖期は延べ77組のペアが営巣し、ヒナ60羽の巣立ちを確認した。しかし、この数は昨年よりも17羽少なく、関係者の思いは複雑だ。

 近年、巣立つヒナの数は過去最多を毎年更新していた。トキは巣立ちから2年で繁殖が可能。ペアも着実に増えていた。環境省佐渡自然保護官事務所の若松徹・主席自然保護官は「冬の寒さや春先の天候不順でエサが十分に捕れず、繁殖のモチベーションが下がった可能性がある」とみる。

 そんな中、関係者を驚かせる出来事があった。平成22年3月、放鳥を控えた11羽が野生復帰ステーションのケージでテンに襲われ9羽が死んだ“事件”。このとき生き残った2羽のうち1羽が、初めてヒナを巣立たせたのだ。

 当時、瀕死の状態で発見された個体番号84番の雄(9歳)だった。佐渡トキ保護センターの獣医師・金子良則さん(60)は、傷ついた84番の姿が忘れられない。「食道が破れてぐったりしていた。正直、ダメだと思った」と当時を振り返る。

 深い傷を金子さんが縫合。その後1週間、チューブで流動食を胃に流し込み命をつないだ。驚いたのは、その後の回復力。2週間後には、自分でドジョウを食べるまでになった。

 しかし、金子さんは84番の傷が完治しても、なかなか放鳥にGOサインが出せなかった。「心の中で何か引っかかるものがあった」のだという。悩んだ末に放鳥したのは、けがから1年半が過ぎた平成23年9月だった。

 84番がヒナ3羽を育てた事実は環境省のモリタリング調査で判明した。トキ専門の獣医師として27年間、孵化させたヒナの数は500羽を超える。それぞれ思いはあるが、金子さんにとって84番は特別な存在。記者が調査結果を伝えると、8年前の出来事を昨日のことのように話してくれた。

 「放鳥したトキは子供と一緒。心配していたらキリがないけどね」。親になった“わが子”の近況を知り、金子さんは穏やかに笑った。(写真報道局 大山文兄)

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