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紛争の日常を切り取る 長倉洋海さんが写真集

紛争の日常を切り取る 長倉洋海さんが写真集

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支援しているアフガニスタン「山の学校」の子供たち(2012年)長倉洋海撮影 支援しているアフガニスタン「山の学校」の子供たち(2012年)長倉洋海撮影

 「美しく生きたい、楽しく生きたい、豊かに生きたい。人を支えているのはそういう願い。それを感じられるような写真が撮りたい」

 世界の紛争地や辺境を取材してきた写真家、長倉洋海さん(64)の仕事を振り返る写真集『フォトジャーナリスト 長倉洋海の眼 地を這い、未来へ駆ける』(クレヴィス・2130円+税)が刊行された。(篠原知存)

フォトジャーナリストの長倉洋海さん
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 通信社を退社した後、フリーのカメラマンとして世界の紛争地を渡り歩いた。「世界が驚くような劇的な写真を撮る」のが目標だった。だが、それは簡単なことではない。「転機になったのはエルサルバドルとアフガニスタンでの体験でした」と振り返る。

 1980年代に内戦を取材したエルサルバドル。政府軍に従軍し、左翼ゲリラも取材したが、滞在するうちに、激しい戦闘シーンだけでなく、生活の場面にも伝えるべき大切なものがあると感じたという。「腰を落ち着けて撮り始めると、それまで見逃していたことに目が向くようになった」

エルサルバドルの市場で母を待つ少女(1982年)長倉洋海撮影
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エルサルバドルの市場で母を待つ少女(1982年)長倉洋海撮影フルスクリーンで見る 閉じる

 たとえばよく通っていた市場で撮影された1枚。解放運動の標語が記された壁の前に裸足の少女がたたずんでいる。静かな写真だが、さまざまなことを考えさせてくれる。

 「写真は見る人の心のありようで変わる。見た人の想像力を引き出すのがいい写真なのでは」

 83年から取りかかったアフガニスタン取材では、反政府運動の指導者だったマスードと行動を共にした。以来、彼が亡くなるまで約17年間交友を保ち、変転するアフガン情勢を取材し続けた。このシリーズは長倉さんの代表作となったが、こちらも劇的な要素よりは、むしろ日常に寄り添っている印象が強い。

アフガン戦士のマスード(1983年)長倉洋海撮影
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アフガン戦士のマスード(1983年)長倉洋海撮影フルスクリーンで見る 閉じる

 「誰だってみんな、与えられた人生、それしかない人生を懸命に生きている。その人生を写したい。写真には一瞬しか写らないけれど、その中に永遠だって閉じ込められる。人間の根源性のようなものを伝えたいですね」

 写真集には初期作から近作までの代表的な作品が収録され、写真説明と短い文章で撮影時の様子が解説されている。フォトジャーナリストの視点の広がり、思考の深まりがよくわかる。

 マスードの遺志を継いで、同国の山岳地帯に暮らす子供たちへの教育を支援するNGO「アフガニスタン 山の学校支援の会」を立ち上げて、代表としての活動も続けている長倉さん。写真の可能性について、こう話す。

 「地域や民族といったさまざまな区切りをどう乗り越えて、いろいろな出来事と人間としてどう関わるのか。言葉では先入観を持ってしまうことにも、映像なら無心に向き合えるかもしれない、そう思っています」

 同名の写真展が14日まで東京都目黒区の東京都写真美術館で開催中。一般800円、13、14日は午後1時から長倉さんのギャラリートークを開催。

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