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【みうらじゅんの収集癖と発表癖】ヘビーキャップ 気軽にかぶれぬトホホなギャップ

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【みうらじゅんの収集癖と発表癖】
ヘビーキャップ 気軽にかぶれぬトホホなギャップ

いずれも重量級の存在感… いずれも重量級の存在感…

 “キャップ”って、帽子の中ではかなりライトな存。気軽にかぶってこそキャップと言えるものなのに、僕が以前から集めてきたものはキャップに刺繍(ししゅう)された文字がやたら重厚で、ヘビーキャップと呼ぶに相応(ふさわ)しいものである。

 そのキャップに於(お)けるギャップが面白く、日本各地の土産物屋を物色してきたのだが、日常はかぶらない。「ホント、似合わないね」と、まわりから言われ一切、かぶる気を無くしたことが大きな原因である。

 昔っから体を動かすことを嫌って生きてきた僕は、体育会系クラブなんぞに属したことは一度もない。浪人時代から基本、ロン毛を心掛けてきたせいもあり、野球帽タイプはすぐに浮き上がってしまうし、今の若者のようにラップカルチャーを通過してないので、どうもキャップはしっくりこないのだ。

 そんな僕だからこそ気付けたのだろうヘビーキャップとの初遭遇は、忘れもしない熊本県上天草市の「天草四郎ミュージアム」横、土産物屋の店先であった。一見、1970年代に流行したアポロ・キャップと思いきや、そこに刺繍されていた文字は『AMAKUSASHIRO』。金の糸がピカピカ輝いていた。

 もちろん、天草四郎は月面着陸で有名になった宇宙飛行士の一人ではない。島原の乱における一揆軍の最高指導者とされたお方である。

 さらに、その名前の下には“NEW HISTORY HAS BEEN BORN FROM AMAKUSA”(新しい歴史は天草から生まれてきた)と書かれていて、不謹慎にもそのキャップのギャップに吹き出しそうになった。当然、この商品は天草四郎本人のプロデュースによるものではないし、その時代にキャップなどなかったはずだ。

 では、何故、ここに存在するのか?

 答えは至極、簡単だ。ひょっとして売れるんじゃないかと土産物業者が作ったからである。僕はその時、たぶんデッドストック(売れ残り品)に違いないと睨(にら)み、店先にあった2個全てをゲットした。だから、これを見た読者が慌(あわ)てて買いに走っても『AMAKUSASHIRO』キャップは手に入らないだろうと思う。

 問題は一生、人前でかぶることもないヘビーキャップがその後、どんどん増えてしまい、結局はテキトーな段ボール箱の中でギュウギュウになっているこの実状をどう考えるべきか? 仕方なく発表癖で自分を誤魔化(ごまか)しているのだが-。

 ちなみに、『S・K』と刺繍の入ったキャップは“SABURO KITAJIMA”の略である。 (作家、イラストレーター) =月1回掲載します

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