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虐待情報の共有「1機関で対応できるほど甘くない」

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虐待情報の共有「1機関で対応できるほど甘くない」

 子供の虐待死を防ぐには、児童相談所が把握する虐待情報のすべてを警察と共有することが重要だ。ただ、児相は相談者の意向やプライバシーを考慮し、警察に情報を提供せず、抱え込む傾向にある。警察と情報共有の協定を結ぶ自治体も増えてきたが、「事件になる可能性がある事案」など危険性の高い案件に限定するところも多い。

 「神ならぬ人間の身で、『この案件は危険性が低いから大丈夫』との判断は傲慢だ。虐待は一機関で対応できるほど甘いものではない。児相が案件を抱え込む姿勢が致命的な間違いだ」。児童虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」代表の後藤啓二(けいじ)弁護士(59)はこう強調する。同法人の調べでは、児相が虐待の疑いを知りながら、関係機関との連携不足で虐待死を防げなかった事例は過去10年で約150件に上る。

 10年前から情報の全件共有を進める高知県の児相の関係者は「親から面会拒否されたときに、電話1本で警察がすぐに来てくれて子供の安否確認ができるようになった」と強調。そのほか、「警察が早期に着手できる意識付けになった」(愛知県)、「支援漏れや抱え込み防止を複数の目で確認できる」(大分県)とメリットが挙がる。

 東京・目黒の女児虐待事件を受け、政府が7月に打ち出した緊急対策では「児相と警察の情報共有の強化」を明記した。しかし保護者の児相への相談萎縮などを恐れ、「虐待による外傷、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待があると考えられる事案」などに限定した。

 後藤氏は「職員が確認できるのは、顔や腕など衣服に覆われていないところに傷がある事案だけ。見えるところにけががない子供が安全である保証はない。むしろ悪質な親ほど見えないところにけがを負わせる」と指摘した。

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