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【書評】書道家・武田双雲が読む 『硯の中の地球を歩く』 石への強烈な愛と努力

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【書評】
書道家・武田双雲が読む 『硯の中の地球を歩く』 石への強烈な愛と努力

『硯の中の地球を歩く』青柳貴史著 『硯の中の地球を歩く』青柳貴史著

 まずタイトルに惹(ひ)かれた。僕は「地球」が大好きで、数え切れないほど「地球」という漢字を書いてきた。オーナーを務めるオーガニックカフェの名も「地球」だ。それにしても不思議なタイトル…。「地球の中にある硯(すずり)」ではなく「硯の中の地球」。表紙に硯はなく、岩山を探索する著者の写真のみ。書道好きでも伝わりにくいマニアックな側面から攻めている。本を開く前からワクワクした。

 書道家にとって硯はとても大切な存在だ。硯で擦った墨の黒は何かが違う。なんとも言えない色っぽい黒を出してくれる。そう、この「色っぽさ」が重要である。ただ墨がおりていけばよいというものとは違う。硯を作る職人の「色っぽさ」がカギとなる。

 青柳さんは色っぽい。失礼ながら「変人」の域である。硯が好きすぎて冒頭から硯のことを「妻」と紹介する。「おはよう」と声をかけ、一緒に風呂に入り、硯から「ありがとう」と返ってくる声が聞こえるそう。2人も妻(硯)がいるのに婚活中で3人目を考えているとも。

 僕も自分の持つ硯にうっとりすることはある。抱きしめたこともある。キスもしたし一緒に寝たこともある。しかしそこまでで止めている。そのずっと先まで突っ走っている青柳さんに少しジェラシーを感じた。

 そして、日本や中国の山奥に何度も立ち入り、死のリスクを負ってまでまだ見ぬ石を探し続けている。そこまで石に強烈に恋する人はなかなかいない。しかも「惚(ほ)」れるだけでなく「彫」れる技術を持っているから、もうこの勢いは誰にも止められない。

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