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【書評】文化部編集委員・三保谷浩輝が読む 『猫はしっぽでしゃべる』田尻久子著 いつまでも読んでいたい…

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【書評】
文化部編集委員・三保谷浩輝が読む 『猫はしっぽでしゃべる』田尻久子著 いつまでも読んでいたい…

『猫はしっぽでしゃべる』田尻久子著 『猫はしっぽでしゃべる』田尻久子著

 猫好きなら大いに納得するタイトル、相好を崩しそうな表紙。もちろん、著者と暮らす猫の話題もあるが、きっと本好きにもたまらない一冊だろう。熊本で今年10周年の小さな書店「橙(だいだい)書店」店主で、熊本発の文芸誌『アルテリ』責任編集者の初エッセー集。

 店には著者が薦められる本だけを置き、自身が一冊一冊選書。「新刊にすばやく対応することさえままならない不便な本屋」だ。だが、いや、それゆえか、同店には県内外から名だたる作家たちをはじめ、さまざまな人が訪れ、出会い、出来事があふれている。

 店では、本を読んだり手紙を書いたり、パソコンで仕事をする人もいて、常連客からは「大人の保育園みたい」とも。〈本を選んでとか、話を聞いてとか言われる私が、保育園のせんせいらしい〉

 毎日のように店で原稿を書き、書きたての原稿をすべて著者に見せる作家もいる。県外から「ただいま」と帰ってくるお客を、また「いってらっしゃい」と送り出す著者もいて、橙書店は“ふるさと”にも似ているか。

 著者の「言葉」との格闘ぶりも印象的だ。本のタイトルも、〈人間にも、しっぽがあればいいのに…考えていることを言葉に置き換えるということは、何十年生きていても、とても難しい。間違ってばかりいる気がする。しっぽをぱたぱたしている猫の気持ちのほうが確実だ〉につながる。

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