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【編集者のおすすめ】「中の人」がつづる本音 『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』伊藤祐靖著

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「中の人」がつづる本音 『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』伊藤祐靖著

『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』伊藤祐靖著 『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』伊藤祐靖著

 「災害のときにテレビで見る」「そもそも存在自体がねぇ」「同級生の〇〇君は自衛隊だって」と、ニュースの題材として、身近な知り合いがなりうる職業としても、話題に事欠かない自衛隊。それなのに、多くの人は意外に実際を知らない。「中の人はいったい何を考えている?」と疑問を感じていたところに、知人を介して著者と出会った。

 伊藤祐靖という元自衛官だ。遺髪を家に置いて海上自衛隊に入り、防衛大での教師生活を経て、軍艦乗りとして順風満帆。その人生を一変させたのは、能登半島沖での北朝鮮工作船との遭遇だった。

 日本人を拉致しているかもしれない相手とにらみ合うことになり、彼はどんな行動をとったか。その後、自衛隊初の特殊部隊創設にかかわり、先任小隊長として最前線の現場で、よりハイレベルな部隊を目指す中、道半ばで彼は自衛隊を去ることになる。

 機能的な行動と迷いのない身体所作、無駄な言葉を口にしないその態度や風貌は、普通の日本人が人生であまり出会えないタイプだろう。現場を知り尽くしたボトムアップの目線と、組織を創ったトップダウンの経験がつむぐ言葉は、実践的で貴重だ。

 この「特殊」な人材はどのように誕生したのか。それを明らかにした本書は、類を見ない奇書となっている。果たして、彼は自衛隊「失格」だったのか。失格なのは逸材を使い切れなかった組織だったのか。1人の男の人生を通して、自衛隊という組織を理解する一助となれば幸いだ。(新潮社・1500円+税)

 新潮社出版企画部・足立真穂

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