産経ニュース

ルドン-ひらかれた夢-展 幻想的イメージの来歴たどる

ライフ ライフ

記事詳細

更新


ルドン-ひらかれた夢-展 幻想的イメージの来歴たどる

オディロン・ルドン「III.不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」『起源』1883年 リトグラフ/紙 岐阜県美術館蔵 オディロン・ルドン「III.不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」『起源』1883年 リトグラフ/紙 岐阜県美術館蔵

 フランス象徴主義の画家オディロン・ルドンは、実は、印象派のクロード・モネと同じ1840年生まれ。モネらが戸外で風景を光とともに描出したのに対し、ルドンは心の奥に潜む「内なる世界」に向き合った。

 しかしそんな孤高のイメージは、ルドンの実像と少し違うのではないか、とポーラ美術館(神奈川県箱根町)の東海林洋・学芸員はみる。急速に産業化、情報化が進んだ19世紀末から20世紀初頭の社会で、ルドンは雑誌など出版物を通して自然科学や芸術、大衆文化といったさまざまな情報を貪欲に吸収。植物学者との交流を通して知見を深めたりと、むしろ時代の空気に敏感だったようだ。同館で開催中の企画展「ルドン ひらかれた夢」は、ルドンを中心に過去から未来へ、その影響関係をひもとく試みである。

 ルドンの神秘の世界には奇怪なものがよく登場する。一つ目の巨人は、科学者チャールズ・ダーウィンの「種の起源」(仏語訳初版は1862年刊行)から連想し創造したもの。進化論が当時の人々に与えたインパクトは大きく、ルドンも太古の原始生物のような「始原的なかたち」を追い求めたという。

 ルドンに通じる神秘や幻想を表す現代美術家、漫画家の作品も展示されている。鴻池朋子の素焼き粘土の作品は、まさに太古の原始生命を思わせる。

 特にルドンとマンガの関係が面白い。ルドンはある神話の怪物を描く際、葛飾北斎の「北斎漫画」を参照したとされる。逆に水木しげるが生んだ「目玉おやじ」のイメージには、ルドンの影響があるそうだ。

 さらに漫画家、岩明均(いわあき・ひとし)の代表作「寄生獣」。人間の右手に寄生する目と口だけの生命体「ミギー」は、人体にひそむ「もう一つの存在」。実はルドンが頻繁に描いた「目」も、画家自身の想像力を意味すると同時に、「理性では抑えられない、内在する他者」を表していた。人知の及ばないものへの好奇心が、奇想天外なイメージとなり、私たちを楽しませてくれる。

 12月2日まで。展示替えあり。9月27日休(常設展などはオープン)。(黒沢綾子)

このニュースの写真

  • ルドン-ひらかれた夢-展 幻想的イメージの来歴たどる
  • ルドン-ひらかれた夢-展 幻想的イメージの来歴たどる

「ライフ」のランキング