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東洋文庫「悪人か、ヒーローか」展 歴史的人物を再考

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東洋文庫「悪人か、ヒーローか」展 歴史的人物を再考

「大清徳宗景皇帝実録」の手書き原本 「大清徳宗景皇帝実録」の手書き原本

 始皇帝、平清盛、足利尊氏、ナポレオン…。英雄とも悪人とも評される古今東西の歴史的人物について、書物などに表れた毀誉褒貶(きよほうへん)を通じ、悪とは何かを考えさせる企画展「悪人か、ヒーローか」が、東京都文京区の東洋文庫ミュージアムで開かれている。

 主にアジアに関する和漢洋の古典籍約100万冊を収蔵し、日本最大の東洋学研究図書館として知られる東洋文庫。企画展ではその所蔵品から、日本と中国を中心とした歴史上の有名人らにまつわる書籍や版画など約60点を展示している。

 人気の高い戦国武将、織田信長。桶狭間奇襲や長篠合戦での鉄砲活用などのエピソードを多数記し、革新的な英傑という現代まで続く信長イメージを形成したのが江戸初期の医師、小瀬甫庵(おぜ・ほあん)の伝記『信長記』。対して江戸中期の儒者、新井白石の史論『読史余論』は信長を「天性残忍」と断じ、その最期も自業自得であると厳しく評する。

 また江戸後期になると、同時代の西洋人のニュースも日本に伝わってくる。儒者、頼山陽の漢詩『佛郎(ふらんす)王歌』は、ナポレオンを偉大な君主にして悲劇の英雄とたたえるが、長年敵対した英国で19世紀後半に出版された『ナポレオン・ボナパルトの生涯』は、「世界各国への侵略者」として批判的に描き出す。英雄か否かは、見る立場によって異なるという好例だろう。

 目玉は、清末期の皇帝、光緒(こうしょ)帝(在位1875~1908年)の治世の公式記録「大清徳宗景(だいしんとくそうけい)皇帝実録」の手書き原本で、世界で同文庫のみが所蔵する一点物。長らく悪女とされつつも、近年は政治家として再評価の声もある清末期の最高権力者、西太后(1835~1908年)に関連する部分が展示されている。

 担当した同文庫の岡崎礼奈学芸課長は、「人物に対する善悪の判断がゆらぎ、常に変化することで、歴史が新たに編まれる原動力の一つとなっている。多様な資料が示す幅広い視点から、そのことを感じてほしい」と話している。(磨井慎吾)

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 9月5日まで。火曜休。一般900円。問い合わせは同館(電)03・3942・0280。

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