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【明治の50冊】(24)国木田独歩『武蔵野』 郷愁誘う自然美の描写

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【明治の50冊】
(24)国木田独歩『武蔵野』 郷愁誘う自然美の描写

桜橋脇の国木田独歩文学碑。柳田国男らが世話人となり没後50年忌の昭和32年に建てられた =東京都武蔵野市 桜橋脇の国木田独歩文学碑。柳田国男らが世話人となり没後50年忌の昭和32年に建てられた =東京都武蔵野市

 今年没後110年の国木田独歩。浪漫主義の小説、随筆、詩的散文ともされる独歩の代表作「武蔵野」は、明治31年、雑誌『国民之友』で発表後、34年刊行の第一小説集に収録、小説集のタイトルにもなった。

 「今の武蔵野の特色」を林に求め、従来、〈松林のみが日本の文学美術の上に認められて〉きたが、武蔵野のナラを中心とした雑木林の四季の変化など、落葉林の美、詩趣をつづった。

 ツルゲーネフ著、二葉亭四迷訳「あひゞき」の落葉林の描写に影響を受けたとし、林で〈座して、四顧して、そして耳を傾け〉と自然への向き合い方も引用する。また、〈ぶらぶら歩(あるい)て思いつき次第に右し左すれば随処(ずいしょ)に吾らを満足さするものがある〉と武蔵野の歩き方も伝授している。

 『日本文学大辞典』(新潮社)は〈都会人に始めて武蔵野の美を知らしめ〉たと指摘。〈細やかなる情感にうつたふる自然を清新に描き出した〉点で徳冨蘆花(ろか)の「自然と人生」とともに「明治文芸の双璧」とした。

 独歩は、39年発表の「自然を写す文章」で、自然の描写法は〈見たまゝ、見て感じたまゝ…その量だけ〉でよく、〈こういふ景色であるから、美しいとかいふて断はることはいらぬ〉〈二二ンが四まで言はなくとも、『二二ン』だけで、あとの四は読者の判断にまかせ〉るべきだと強調した。

 描写したのは自然だけではない。朋友からの手紙を引用、「武蔵野の範囲」で東京(都心)は〈必ず抹殺せねばならぬ〉、逆に、町外れ(市街と郊外との境)は〈必ず抹殺してはならぬ〉とあり、独歩も同意見だとしている。

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