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【欲望の美術史】宮下規久朗 プラド美術館展 魔術的な描写力と存在感

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【欲望の美術史】
宮下規久朗 プラド美術館展 魔術的な描写力と存在感

 現在、兵庫県立美術館で「プラド美術館展」が開催されている(10月14日まで)。2006年にも大阪市立美術館で大規模な「プラド美術館展」があったが、今回はとくにベラスケスの作品が7点も来日していることが注目される。

 スペイン17世紀の画家ベラスケスは世界最高の画家であり、その代表作「ラス・メニーナス」は世界最高の名画である、と評者はつねづね主張してきた。それは、絵画という芸術の究極の形であり、人類史上のひとつの奇跡といってよい。

 彼は改宗ユダヤ人の子孫としてセビーリャに生まれ、宮廷画家としてマドリードの王宮に入り、国王フェリペ四世に寵愛(ちょうあい)され、宮廷官吏としても順調に出世して王宮配室長に登りつめ、最後はついに貴族となった。その末裔(まつえい)は現在のスペイン国王につながっているという。

 このように、画家としては異例の出世をとげた彼は、順風満帆な人生を送ったかのように見えるが、その芸術は革新に満ちていた。初期の驚嘆すべき写実的な風俗画から、生気あふれる宮廷人の肖像画、堂々たる歴史画の大作を経て、「ラス・メニーナス」にいたる歩みである。緻密な細部描写に始まり、印象派を先駆する自由闊達(かったつ)な筆触によってその芸術を深化させ、ついに光や空気の振動までも表すような神業に達したのだ。

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