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【王位継承物語】政党政治の調整役 ベルギー分裂防ぐ「統合の象徴」 関東学院大教授・君塚直隆

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【王位継承物語】
政党政治の調整役 ベルギー分裂防ぐ「統合の象徴」 関東学院大教授・君塚直隆

ベルギーのフィリップ国王夫妻(両端)主催の答礼コンサートを鑑賞のため着席される天皇、皇后両陛下=平成28年10月、東京都千代田区の紀尾井ホール ベルギーのフィリップ国王夫妻(両端)主催の答礼コンサートを鑑賞のため着席される天皇、皇后両陛下=平成28年10月、東京都千代田区の紀尾井ホール

 「ウォルター・バジョットは立憲君主国における君主の特権を以下のように述べております。知らせる特権、奨励する特権、そして警告する特権です。この数カ月、私は最初の2つの特権を用いてきました。私は今まさに公式に、また透明性をもって、第3の特権を用いたいと思います。警告する特権です」

 この力強い言葉は7年前の2011年7月21日、ベルギー建国記念日にあたっての国王アルベール2世のテレビ演説の一部である。なぜ栄えある建国記念日に国王はこのような発言をおこなったのだろうか。

 前年の10年6月に行われた連邦選挙で、フランデレンの経済的な自治の強化や将来的な独立を訴えた新フランデレン同盟が第一党となったが、ベルギーは元来が多党制の国であり、単独で過半数を制することのできる政党は存在しない。長年の民族・言語的な対立に加え、経済的にもしこりの残るワロン系の諸政党が連立交渉に応じることは難しかった。

 1831年の建国時に、ベルギーでは国王の権力を制限する当時としては先駆的な憲法が制定され、選挙の後で政党指導者に政権樹立を促す際にも、国王はまず「組閣担当者」という非公式の役職を任命し、他の政党との交渉を行わせる一方でその過程を逐一報告させていた。1960年代になり、フランデレン系とワロン系の政党間で交渉が難航すると、「情報提供者」というこれまた非公式の役職が任命され、政財界有力者との相談で「組閣担当者」に誰がふさわしいかを国王に助言するシステムが確立された。

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